【帯広畜産大学】博士課程獣医学専攻3年の吉田桜さんが第37回日本ウマ科学会学術集会最優秀発表賞、共同獣医学課程6年の植村果穂さんが同優秀発表賞を受賞
11月27日(水)に東京都にて開催された日本ウマ科学会第37回学術集会において,帯広畜産大学大学院博士課程獣医学専攻3年の吉田桜さん(指導教員:南保泰雄教授)が、最優秀発表賞、共同獣医学課程6年の植村果穂さん(指導教員:武山暁子助教)が、優秀発表賞を受賞しました。
日本ウマ科学会学術集会は、年に1度東京で開催され、競馬サークルや全国の大学、生産関連組織関係者が一堂に集まり、馬に関する最新の研究成果、獣医畜産学を中心に、人文社会学、芸術など多岐にわたる「ウマ科学」に関連する研究成果を議論する国内最大の学術集会です。
一般講演54演題から5演題が優秀発表賞として選出され、さらにその中から発表審査により最優秀発表賞1演題が選出される、狭き門の中での価値ある受賞となりました。
吉田さんは、「日本輓系種新生子馬における血液及び初乳中の免疫細胞動態の経時的変化の解析」と題した研究成果を発表しました。北海道十勝で実施されるばんえい競馬の資源となる日本輓系種の生産には、子馬が良質な初乳を吸乳することが、重篤な感染症の予防に重要となっていますが、初乳中の免疫細胞、サイトカイン等の免疫賦活化物質が子馬の免疫能にどのように影響しているか、不明です。吉田さんは、白血球表面抗原をフローサイトメーターという最新技術により免疫細胞数を測定し、その役割を考察しました。その結果、初乳は血液・常乳に比べてT細胞割合が多い細胞成分であり、日本輓系種においてもCD8標識細胞を中心とした初乳への選択的な動員が行われていることが示唆されました。これらの研究成果は、「よりよい初乳とはなにか」とう疑問を解決する大きなヒントとなり、十勝地方の主要産業である重種馬の生産性向上に貢献する内容であることが評価されました。
植村さんは、「日本輓系種における血液学的・血液生化学的・血液内分泌学的特徴及び肥満との関連性の解析」と題した研究成果を発表しました。世界最大の重量と力強さをもつ日本輓系種は、極端な重量増加による肥満やメタボリックシンドロームなど、さまざまな疾患と隣り合わせに飼養管理されているこが問題となっていますが、本種における血液生化学および内分泌学に関する肥満との関連を解析した研究はこれまでにありませんでした。本研究の解析結果から、多くの血液生化学指標の項目においてこれまでに利用されていた軽種馬の基準値と大きな差があり、日本輓系種独自の基準値を確立する必要性があることが判明しました。また、肥満によりコレステロール, トリグリセリド、インスリンが有意に高値を示し、「インスリン調整機能の障害」が本品種の繁殖牝馬の肥満に関連していることが示唆され、今後、重種馬生産で問題となっている蹄葉炎などの肥満関連疾患の早期摘発に有用であることが評価されました。
吉田さんは「ばん馬が好きでばん馬の診療・研究に努めてまいりましたが、このような栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。これからもばん馬の生産性向上にむけて精進し、元気な子馬たちが増えるよう努めてまいります。」と述べ、植村さんは「大学でウマのサークル活動、学生として重種馬の獣医療に携わりながら、良い研究成果として評価をいただき大変光栄に思います。これからも生産現場の問題を解決できる獣医師になれるよう頑張りたいと思います」とそれぞれ受賞の喜びを語りました。