IIC News Letter 第3号(令和6年12月配信)
<IIC News Letter第3号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第3号です。定期的に三大学の教育研究活動や行政・サービス機関、産業界からの最新情報を分析・整理して皆様にお届けします。
目次
1. 北海道国立大学機構の研究紹介
2. 北海道における大学入学者の推移
3. 「木の酒」プロジェクト
4. 特許情報
1. 北海道国立大学機構の研究紹介
帯広畜産大学には、酪農家にとって大きな課題である家畜の「ふん尿」を有効資源にしようと頑張っている研究者がいます。その中でも、環境農学研究部門の宮竹史仁教授は、家畜排せつ物から効率的に堆肥を生産するシステムの開発に取り組んでいます。堆肥は家畜排せつ物などから作ることができますが、管理方法や送風条件を誤ると、メタンなどの温室効果ガス(GHG)の排出が増えてしまいます。宮竹教授は、ロボット技術や計測技術を駆使し、堆肥づくりに不慣れな人でも安定的に高品質な堆肥の製造を可能にしました。
堆肥には窒素、リン、カリウムといった成分が含まれており、化成肥料の代替として利用できることから、持続可能な農業にとって戦略的な肥料資源として期待されています。また、一般的な牛床で使われているオガ粉の代わりに堆肥を使用すると、乳牛の乳房炎を予防できるそうです。
家畜のふん尿を「処理しなければならないもの」と考えるのではなく、「有用な資源を生み出すもの」と捉え直すことで、持続可能な資源循環型の農畜産業を実現する日が近づいてきます。
2. 北海道における大学入学者の推移
文部科学省は、2040年の北海道の大学入学者が2021年の約7割になると推計しました(令和6年11月12日)。このような状況は大都市圏を除く全ての地域でみられ、大学と自治体、産業界を巻き込んで入学者数の減少に歯止めをかける様々な取り組みが行われています。例えば、長野県や和歌山県では、新たな大学を独自に開設して、入学者数を増やすことで卒業生の地元定着数を確保しようとしています。山口県では、県庁が音頭を取って課題解決型学習や初心者向けのデータサイエンス教育を実施しています。山梨県では、地域連携プラットフォームを構築していますが、そのスピード感に課題があると判断し、コーディネータを配置した小回りのきく新たな組織を立ち上げ、地域ニーズに対応した人材育成に取り組んでいます。このように取り組みは様々ですが、自治体毎に大学の存続が地域の産業振興に与える影響を重視して対策を練っており、複数の大学の横連携体制も構築されているようです。
北海道国立大学機構は3大学の経営統合によって発足し、間もなく3年が経過します。既に3大学の志願者数は少子化の影響を受けていますが、今後ますます厳しい状況になりますので、それぞれの強みを活かした先進的な教育研究と高校生への情報発信に力を入れています。特に農畜産や食品加工に関わる研究と高度人材の育成は、道内の産業振興に不可欠です。自治体、産業界のご支援をよろしくお願い致します。
3. 「木の酒」プロジェクト
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所では、木そのものを糖化発酵させて造るお酒(「木の酒」)の技術開発を行っています。「木の酒」の技術開発により、国産材の高付加価値化、林業の成長産業化、山村振興を目指しています。
「木の酒」を造るためには、木材成分のセルロースを食品用酵素(セルラーゼ)によってブドウ糖に分解する必要がありますが、木材中のセルロースはリグニンという硬い成分に覆われており、セルラーゼで直接分解できませんでした。
そこで、湿式ミリング処理という手法により、細胞壁の厚さ(2μm)以下まで粉砕することで、リグニンに覆われたセルロースを露出させ、セルラーゼによってセルロースを直接分解してブドウ糖を得ることができました。
「木の酒」は、樹種や樹齢によって異なる風味を醸し出すことから、産地ごとに特産化しやすい特徴があります。森林総合研究所では、「木の酒」の社会実装に向けて、安全性確認と事業展開する企業への技術移転をすすめています。
北海道国立大学機構・三大学でも、木材の有効利用に関する研究に取り組んでいます。木材の利用や林業に関する課題を共有し、議論を深めたいと考えていますので、皆様からのご意見、ご要望をお待ちしています。
4. 特許情報
機構・3大学が有する知的財産権を順次ご紹介しています。共同研究やライセンス契約をご検討の際にご活用ください。
IIC News Letter 第3号では、以下の特許をご紹介します。内容は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面の記載に基づいてまとめたものです。
機構・3大学の特許等、知的財産にご興味がある方は、ワンストップ窓口にお問い合わせください。
第3号では、
・特許第6721362号 サイクロン分離装置及び住宅換気用給気フード
・特許第6881735号 ニッケルを実質的に含まない表層を有するニッケル/チタン合金及びその製造方法
をご紹介します。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
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北海道広域連携プラットフォームは、北海道における様々な課題を共有し、産学官金連携によって解決に導く場です。皆様からのご意見、ご要望をお待ちしています。
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