IIC News Letter 第7号(令和7年4月配信)
<IIC News Letter第7号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第7号です。定期的に3大学の教育研究活動や行政・サービス機関、産業界からの最新情報を分析・整理して皆様にお届けします。
目次
1. 研究紹介:少子化が続く地方の活性化を目指した教育活動
2. グリーンアジアプロジェクトとは?
3. 日本の飼料自給率は27%!このままで大丈夫?
4. 特許情報
1. 研究紹介:少子化が続く地方の活性化を目指した教育活動
北見工業大学工学部の酒井大輔准教授は、坂上寛敏准教授らと共に、オホーツク地域エネルギー環境教育研究会(OE3)を通し、近隣の子ども達へ向けた教育活動を行っています。
近年、地方都市での少子化が急速に進んでおり、その影響は大学への志願者数にすでに現れています。オホーツク地域でも同様の傾向が表れており、労働力人口の減少と共に地方都市での大きな課題となっています。
OE3は、もともとエネルギー環境教育の地域拠点として大学を活用することを目的に設立された団体でしたが、現在ではそのスコープを広げ、オホーツク地域の子どもたちに好き・嫌いが出てくる前から理科を好きになってもらうことを目標に積極的な教育活動を進めています。活動メンバーには、北見工業大学の教職員の他、地域の中学校、高等学校の理科教諭、関連企業や北見市が参画しており、従来の理科では体験できなかったような新しい教材を開発しながら、近隣市町村で様々な教育イベントを実施しています。
理科を楽しいと思う生徒の増加は、北見工業大学への志願者増に直接つながることが期待できます。さらに、地方都市では、未だに女子生徒の文系選択率が高い背景もあり、理系への選択肢を広げることができれば、志願者が増加する可能性もあります。
地元出身の学生は、他地域から入学した学生に比べて地元愛が強く、大学卒業後も地元に就職するケースが見られます。そして、地元で生まれた子どもが、また北見工業大学を志願してくれる流れができれば、それは大学にとっても、地域への最高の貢献になり得ると期待しています。
図:バーチャルリアリティで北見市のごみ分別をゲーム感覚で学べる教材
(左):体験者の様子、(右):ヘッドマウントディスプレイ内の画像
北見工業大学 教員紹介 酒井大輔准教授:
https://www.kitami-it.ac.jp/brand/archives/result15.php
または
https://www.kitami-it.ac.jp/about/academicstaff/1295/
北見工業大学 光情報処理研究室Webページ:
https://kit-dlab.pages.dev/
2. グリーンアジアプロジェクトとは?
「グリーンアジアプロジェクト」は、日本の国際農林水産業研究センター(国際農研)が行っている活動です。
これまで日本では、食料システムに関して多くの技術が開発されてきましたが、このような技術の中には、高温多湿という気候や中小規模の農業者の割合が高いという特徴を共有するアジアモンスーン地域にも活用できるものがあります。アジアモンスーン地域は、日本やシンガポール、インドを含む広い地域であり、世界人口のうち44%もの人が住んでいるため、この地域の食料システムをより良くすることは世界的にも重要です。
このプロジェクトでは、食料システムに関する技術を活用し、いろいろな国の機関や大学の研究者が協力して環境にやさしく、農業をもっと便利で持続可能なものにすることを目指しています。
活用される技術は、「アジアモンスーン地域の生産力向上と持続性の両立に資する技術カタログ」にまとめられて、情報発信されています。例えば、ハウス冷暖房の排ガス活用技術や、スマート農業を促進する農業機械技術が掲載されています。この技術カタログは、国や機関、産業の分野ごとに技術を簡単に検索できるようになっており、地域の生産者や事業会社を含む多くの関係者にも大変参考になります。
アジアモンスーン地域の生産力向上と持続性の両立に資する技術カタログ:
https://www.jircas.go.jp/ja/greenasia/techcatalog
3. 日本の飼料自給率は27%!このままで大丈夫?
日本では、牛や豚、鶏などの家畜が食べる飼料の多くが外国から輸入されています。飼料をどのくらい自分たちで生産できているかを示す割合が飼料自給率であり、これが高いほど輸入に頼らず国内で飼料を確保できるということになります。
2023年の日本の飼料自給率はおよそ27%です。つまり、家畜が食べる飼料の約4分の1だけを日本で作っているということになります。
飼料のうち、牧草や稲わらは日本で作られることが多いですが、とうもろこしや大豆はほとんど外国から輸入されています。輸入される飼料は安価ですが、世界情勢の変化により、もし輸入できなくなったり、今よりもさらに価格が高くなったりすると大変です。
そこで、飼料をもっと自分たちで作る取り組みが行われています。とうもろこしを早めに刈り取った「青刈りとうもろこし」を牛の飼料に使ったり、飼料用の米を育てたりしています。また、レストランや工場で出た食べ物残渣を飼料にする「エコフィード」という方法も行われています。
農林水産省では、2030年までに飼料自給率を34%に向上させることを目指しています。この目標に向かって、地域の農家と牧場が協力して飼料を作るしくみを広げたり、新しい飼料作りの方法を研究したりしています。日本の農業や畜産業を守るために、これからも地域の力を合わせて飼料自給率を高めていくことが大切です。3大学でも、飼料に関する研究開発、地域連携、教育に取り組んでまいります。
4. 特許情報
北海道国立大学機構が持っている知的財産権を順次ご紹介しています。今回は、「アクチュエータ装置・発電システム」と「堆肥製造技術」の2件。共同研究やライセンス契約検討の参考にしてください。
内容は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面の記載に基づいてまとめています。ご興味がある方は、ワンストップ窓口までお問い合わせください。
特許第5885966号(アクチュエータ装置及び発電システム)
ガスハイドレートの物理作用を利用した、熱エネルギを機械的エネルギに変換するアクチュエータ装置と、その装置による発電システムに関する発明です。ガスハイドレートとは、二酸化炭素などのガスと水によって作り出された氷状の物質です。この発明によりエネルギを有効に活用することができます。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
特許第5565773号(堆肥製造方法および装置)
堆肥を製造する際の消費電力を削減し、さらにメタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)といった強力な温室効果ガスの排出量も低減できる、新たな堆肥製造技術を提供します。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
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