IIC News Letter 第9号(令和7年6月配信)
<IIC News Letter第9号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第9号です。定期的に3大学の教育研究活動や行政・サービス機関、産業界からの最新情報を分析・整理して皆様にお届けします。
目次
1. 特集:北海道における産学連携を「進める、変える」取り組み〜チャレンジフィールド北海道〜
2. 営農型太陽光発電とは?~農業と再生可能エネルギーの融合~
3. 特許情報
1. 特集:北海道における産学連携を「進める、変える」取り組み〜チャレンジフィールド北海道〜
従来の産学連携では、技術的あるいは戦略面で困っている企業が大学の先生を訪ね、大学の先生が解決に取り組むという形が典型的でした。このような課題持ち込み型の産学連携は先生と企業の1:1の小ぶりの連携となってしまうことが多く、また、地域の課題のような複合的な課題が取り上げられることは多くありませんでした。
経済産業省産学融合先導モデル拠点創出プログラムでは『マルチステークホルダーを巻き込み、インクルーシブで、人材やアイデア、情報の流動性を高めた「産学連携 3.0」を展開』する提案を募集し、令和2年に北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)と道内大学・支援機関・自治体が共同提案した「チャレンジフィールド北海道」が採択されました。
「チャレンジフィールド北海道」では、シーズ起点とニーズ起点の双方向から産学連携の支援に取り組みました。シーズ起点の取り組みでは、北海道国立大学機構からは下記のテーマが提案され、実証のための研究費、実証研究の連携先の探索・紹介、成果の広報などの支援を行いました。一方、ニーズ起点の取り組みでは、第一次産業における課題などを取り上げ、その地域課題を解決できる先生を道内から探して、大学の垣根を越えた取り組みを推進しました。林業の課題としては、国際情勢に由来して外国の広葉樹材が入手しにくくなり、またできるだけ地元の広葉樹を活用しようという考え方から、道産広葉樹資源の「見える化」を進める取り組みを北見工業大学にお願いしました。また、はこだて未来大学には、木材加工におけるデジタル技術の導入の取り組みをお願いしました。ニーズ起点の取り組みでも、実証のための研究費、実証研究の連携先の探索・紹介、成果の広報などの支援を行いました。
北海道国立大学機構三大学の産学連携部署の先生方には「上級エリアコーディネーター」として、大学と地域の連携の強化、大学間連携の促進、研究の成果発信を支援していただきました。これらの研究の成果にご興味がある方は、是非「チャレンジフィールド北海道」のサイト(https://challenge-field-hokkaido.jp)をご参照ください。
<筆者>
産学官金連携統合情報センター(IIC) 産学官金連携コーディネーター 扇谷 悟
(プロフィール):
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)にて、主に微生物、遺伝子発現制御、食品の機能性に関する研究に携わる。最後の10年ほどは、北海道センター所長・所長代理として、主に第一次産業関連企業と産総研の共同研究を推進するコーディネーター活動に注力。外部での活動としては、2003-2014年北海道大学教授および客員教授、2017年国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)にて医療機器関連予算の管理を担当。2022年より公益財団法人北海道科学技術総合振興センター(通称ノーステック財団)に在籍。
現在は、ノーステック財団チーフコーディネータ、産総研研究支援アドバイザーを兼務。
2. 営農型太陽光発電とは?~農業と再生可能エネルギーの融合~
営農型太陽光発電は、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光パネルを設置し、農業を継続しながら発電を行う取組みです。農業と再生可能エネルギーの融合による新たな地域づくりの鍵として、今後ますます重要性を増すと考えられます。技術の進展とともに、地域特性に応じた柔軟な導入が期待されます。
北海道では、帯広畜産大学の実習圃場において、両面パネルを備えた垂直型太陽光発電設備と傾斜型太陽光発電設備が設置され、発電量の比較等を行うパイロット実験が行われています。この実験では、それぞれの設備で表面、裏面の発電量、季節ごとの発電量、設置の向きによる発電量について、1年間かけて分析します。得られたデータを活用して、より精緻な発電量を予測し、設置場所の環境や農地・放牧地の使用状況に合わせて最適な設置形態を見出すことを目指しています。
垂直型太陽光発電設備は、積雪による反射光も活用できるため、十勝の気候に適し、地域に根ざした再生可能エネルギーと農業の共存モデルとして注目されています。地元農協や企業と連携しながら、地域全体で持続可能な農業とエネルギーの融合を目指す取組みがすすんでいます。
このような、営農型太陽光発電の導入により、作物の販売収入に加え、発電電力の自家利用等による農業経営の更なる改善が期待できますし、災害時の非常用電源としての活用や、スマート農業との連携なども期待されています。
現在の状況について、営農型太陽光発電設備下部の農地面積は、令和4年度までの累計で1209haあり、栽培作物は、観賞用植物が36%と最も多く、野菜等が29%、果樹が13%の順に多くなっています。営農型太陽光発電設備の設置者は、主として発電事業を営んでいる発電事業者が70%、農業者や農地所有者が30%となっています。
農林水産省Webページには、「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」が公開されています。全国の営農型太陽光発電の取組み事例など、参考になります。
帯広畜産大学 ニュース
https://www.obihiro.ac.jp/news/62674
https://www.obihiro.ac.jp/news/66547
農林水産省 営農型太陽光発電について
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/einou-61.pdf
3. 特許情報
北海道国立大学機構が持っている知的財産権を順次ご紹介しています。今回は、「簡単な構成、低コストで正確に移動体の通過判定ができる技術」と、「ユーザが視線を向けるだけで機器を非接触で操作できる技術」の2件です。共同研究やライセンス契約検討の参考にしてください。
内容は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面の記載に基づいてまとめています。ご興味がある方は、ワンストップ窓口までお問い合わせください。
●特許第7658563号(移動体通過判定システム及び判定方法)
人や物体などの移動体の通過を、正確に判定する技術です。従来の赤外線センサのような専用センサを用いることなく、複数のARマーカーと、それを撮影する小型カメラモジュールやスマートフォン内蔵のカメラ等の撮影手段を備えることで、簡単な構成、かつ低コストで移動体通過判定ができます。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
●特許第7563745号(操作検出システム及び操作検出方法)
空中に浮かんで見える空中像を非接触で操作する技術です。ユーザが空中像に一定時間継続して視線を向けるだけで、ユーザの操作を検出でき、操作検出システムに接続された外部機器を非接触で操作できます。ユーザのジェスチャー操作が不要なため、肢体不自由者であっても容易に操作できます。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
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北海道広域連携プラットフォームは、北海道の様々な課題を共有し、産学官金連携によって解決に導く場です。皆様からのご意見、ご要望をお待ちしています。
国立大学法人北海道国立大学機構
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