IIC News Letter 第12号(令和7年9月配信)
<IIC News Letter第12号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第12号です。昨年の10月よりIICニュースレターを配信し、ちょうど1年になります。今後、お届けするコンテンツの更なる充実を図っていくために、IICニュースレターアンケートに是非、ご協力ください。
目次
1. 地域資源を活かす観光プロジェクト――観光を「稼ぐ力」に
2. ステークホルダーからのご意見
3. 統合イノベーション戦略2025と大学の役割
4. 特許情報
<<<<<IICニュースレターアンケートのお願い>>>>>
今後のIICニュースレターの参考にさせていただきたいため、是非アンケートにご協力ください。選択式で、3分程度で完了します。よろしくお願いいたします。
1. 地域資源を活かす観光プロジェクト――観光を「稼ぐ力」に
北海道国立大学機構では、寒冷地特有の自然環境を科学的に観測・解析する技術を活かして、観光資源の発掘と活用に取り組んでいます。その取組みが、環境データを活用した観光DX「Zekkeiプロジェクト」※1, ※2。蜃気楼や雲海など偶発的な自然現象を予測・可視化することで、これまで観光資源化されていなかった絶景を新たな魅力として発信しています。観光客が絶景に遭遇する確率を高めるアプリ開発やVR体験の導入により、地域の持続的な活性化を目指しています。さらに、防災・交通など多分野への展開も期待されています。
近年の観光では、訪日観光客や若年層を中心に、ただモノを買うのではなく、“体験”そのものに価値を見出す人が増えており、Zekkeiプロジェクトの取組みはそのようなニーズに合致します。
特に北海道には、多様な地域資源を活かした観光プロジェクトがあります※3。
例えば、夜の自然を活かした星空観察やライトアップされた歴史的建造物の散策など、昼とは違う北海道の魅力を感じるナイトタイム・エコノミー、雪原を歩くスノーシューツアーや森の中でのセラピー体験などのアドベンチャートラベルなどがあげられます。さらに、地域の食文化や食材を通じてその食材の背景にある文化や歴史、生産者の想いに触れることを目的としたガストロノミーツーリズム、北海道内のワイナリーを巡りながら、土地の風土とともに味わう体験ができるワイン・ツーリズムなどもあります。
北海道国立大学機構では、環境データを活用した観光DXにより、地域と共に観光を「稼ぐ力」に変えていく挑戦をしています。様々な研究成果を、北海道の観光プロジェクトに活かせる可能性があります。是非、ワンストップ窓口までお問い合わせください。
北海道の「地域資源」の例
・※1 北見工業大学 特異な自然景観の発掘・予測研究ユニット「Zekkeiプロジェクト」制作動画
https://www.kitami-it.ac.jp/topics/71486/
・※2 北海道国立大学機構 Zekkei(絶景)シンポジウム2023:「Zekkei の未来を地域の力に!」
https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/event/4081/
・※3 北海道観光機構 北海道内 47 地域で観光プロジェクト始動
https://www.visit-hokkaido.jp/lsc/upfile/info/0000/0249/249_1_file.pdf
2. ステークホルダーからのご意見
北海道国立大学機構は、ステークホルダーの皆様から様々なご意見を頂いております。その中のひとつに、「自分の足でステークホルダーを訪ねて要望を収集するコーディネータが少ない」というコメントがありました。この問題を解決する1つの手段として、文科省のガイドラインに従った「地域連携プラットフォーム」の設置があるのですが、これまでに全国に約300のプラットフォームが設置されながらも、具体的な活動につながった事例が少ないそうです。
一方、今年2月の中央教育審議会から文科省への答申※4には、待ったなしで押し寄せる「少子化」への対応方針が、「質」、「規模」、「アクセス」という3つのキーワードでまとめられています。
「質」とは教育の質の向上や学生の能力の向上、「規模」とは少子化を見据えた大学間の連携や再編・統合、そして「アクセス」とは、大学から物理的あるいは時間的に遠い人たちにも高等教育の機会を提供し、地方創生に貢献する人材を育てることを意味しています。
この答申を受けて、文科省は今年の4月に「地域大学振興室」を立ち上げ、2つの取組が始められています※5。
1つ目は、地域の大学、自治体、企業に加えて、短大、高専、金融、マスコミなどを含めた大きな規模の「プラットフォームの構築」です。
2つ目は、そのような大きなプラットフォームで議論した内容を実行に移す推進機構の設置です。そこには2つのパターンが示されており、パターン1は、複数の大学が連携した教育研究や経営の統合で、まさに我々機構3大学の取り組みそのものです。そして、パターン2は複数大学と自治体や産業界とが連携した地方創生プロジェクトの実施で、IICニュースレター8月号でご紹介しました「十勝型フードシステム(内閣府地方大学・地域産業創生交付金事業)」がそれに該当します。
発足から3年半が経過した北海道国立大学機構は、上記の文科省の取組を先行して実施しており、今後も、3大学の経営統合の更なる推進に加えて、地方自治体や産業界との連携を着実に強化して参ります。
引き続きのご支援をよろしくお願い致します。
文科省 地域大学振興室の立ち上げ
・※4 我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1420275_00014.htm
・※5 地域大学振興に関する有識者会議(第1回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/133/giji_list/1418919_00003.htm
3. 統合イノベーション戦略2025と大学の役割
2025年6月、内閣府は「統合イノベーション戦略2025」を閣議決定しました※6。この戦略は、科学技術とイノベーションを通じて社会課題を解決し、持続可能な未来を築くための国家戦略です。大学はこの戦略の中核を担い、研究力の強化、人材育成、そして地域との連携を通じて社会実装を推進する役割を期待されています。
戦略の柱は3つあります。
1つ目は「先端科学技術の戦略的な推進」です。AI、量子技術、バイオ、フュージョンエネルギーなど、未来を左右する技術分野への重点的な研究投資が進められます。大学では、これらの分野における基礎研究と応用研究の両輪を回すことで、社会実装への道筋を描くことが期待されています。
2つ目は「知の基盤(研究力)と人材育成の強化」です。大学の研究環境を整備し、若手研究者の育成や多様な人材の活躍を支援する取り組みが進められます。特に地方大学では、地域課題に根ざした研究を通じて、地域の未来を担う人材を育てることが重要視されています。
そして3つ目は「イノベーション・エコシステムの形成」です。大学、企業、自治体が連携し、研究成果を社会に届ける仕組みづくりが求められています。スマートシティの展開や地域産業の高度化など、大学の知が地域の実践と結びつく場面が増えてきています。
この統合イノベーション戦略2025では、大学が「社会実装の拠点」として機能することが強く求められています。研究成果を論文にとどめず、製品やサービスとして地域に届けるためには、産学官金の連携が不可欠です。北海道国立大学機構は、この戦略に基づいて地域の皆さまと知を共有し、共に歩んでいきたいと考えています。
内閣府 統合イノベーション戦略2025
・※6 内閣府 統合イノベーション戦略2025
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/2025.html
4. 特許情報
北海道国立大学機構が持っている知的財産権を順次ご紹介しています。今回は、「二酸化チタン皮膜を有するNiTi合金の製造方法」と、「果実野菜皮むき装置及び果実野菜皮むき方法」の2件です。共同研究やライセンス契約検討の参考にしてください。
内容は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面の記載に基づいてまとめています。ご興味がある方は、ワンストップ窓口までお問い合わせください。
●特許第7479665号(二酸化チタン皮膜を有するNiTi合金の製造方法)
NiTi(ニッケル-チタン)合金は、形状記憶合金の一種として知られ、血管ステント、歯科矯正ワイヤなどの医療器具材料として使われています。NiTi合金は強度や耐食性に優れますが、Niイオンが表面から溶出し、生体内でアレルギーを誘発することがあるため、これを解決するための発明をご紹介します。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
●特許第7174948号(果実野菜皮むき装置及び果実野菜皮むき方法)
南瓜などの硬質で凹凸が多い果実野菜の皮むきは、熟練した作業員のスキルが必要であるため、スキルを必要としない皮むき技術の開発が求められています。果実野菜の表皮の皮むきを行うピーラを果実野菜の表皮の形状に応じて方向制御することで、均一に連続してむくことができる皮むき技術をご紹介します。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
<<<<<IICニュースレターアンケートのお願い>>>>>
IICニュースレターを昨年10月より配信し、今回でちょうど12回目、1周年を迎えました。今後の方針に役立てたいと思いますので、是非以下のアンケートへの回答をお願いします。選択式で、3分程度で完了します。また、任意でご意見・ご要望欄にご記入もいただけます。
———————————————————————————————————————
IICニュースレターでは、地域の課題を解決し、新たな価値を共創するための情報を発信しています。また、企業へのインタビューなどを通して、地域の未来をいっしょに考える場づくりにも活用しています。
今後、こんな特集をしてほしい、もっとこういう取組みが必要だ、といったご意見、ご要望もお待ちしています。また、この記事は面白かった、あるいは面白くなかったなど、なんでもお気軽にお問合せください。
国立大学法人北海道国立大学機構
産学官金連携統合情報センター(IIC)
〒080-8555 帯広市稲田町西2線11番地
Tel:0155-65-4344
E-Mail:iic@office.nuc-hokkaido.ac.jp
IIC News Letter の停止はiic@office.nuc-hokkaido.ac.jpまでご連絡ください。