IIC News Letter 第16号(令和8年1月配信)
<IIC News Letter第16号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第16号です。定期的に3大学の教育研究活動や行政・サービス機関、産業界からの最新情報を分析・整理して皆様にお届けします。
目次
1. 【研究紹介】地域資源の生かし方~地域ブランド化を中心に~
2. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(1)
3. 北海道におけるデータセンター誘致と地方大学の役割
1. 【研究紹介】地域資源の生かし方~地域ブランド化を中心に~
小樽商科大学の長村准教授は、地域資源の持続的な活用法として「地域ブランド」に着目し、その形成プロセスと課題を研究しています。
現在、多くの自治体が人口減少や少子高齢化、それに伴う税収減や労働力不足という深刻な課題に直面しています。これらを解決し、地域経済に新たな活力をもたらす切り札として期待されているのが、独自の自然、歴史、産業を生かした「地域ブランド」の確立です。
「地域ブランド」とは、消費者がその地域に対して抱く信頼や評価という「無形資産」を指します。これは、「地域産品」と「地域空間」という2つのカテゴリーに大きく分類されます。
●「地域産品」:買いたい価値を構築する地域ブランドであり、産地名をブランド化し、他との差別化を図ることで「高付加価値(適正な高価格)」を目指すものです(例:夕張メロン、大間のマグロなど)。確立には、品質基準の厳格化やロゴマークの戦略的運用、一貫した販売戦略が不可欠です。
●「地域空間」:行きたい価値を構築する地域ブランドであり、観光地や街並みなど、地域そのものの魅力を高めるものです。対象が多岐にわたるため、関係者間での価値観の共有(ブランドの内部化)や、組織が自立して動く「自走化」の仕組みづくり、リスク管理(炎上対策)などが重要な鍵となります。
また、長村准教授はブランド開発に不可欠な要素として以下の3点を提唱しています。
(1)ストーリーの一貫性:地域の歴史的背景などを踏まえた物語(ストーリー)を構築し、コンセプトをぶらさないこと。
(2)試行錯誤の量と質:プロジェクトを停滞させず、現場での実践と検証を繰り返すこと。
(3)シビックプライドの醸成:住民が地域を誇りに思う心(シビックプライド)を育み、時代に合わせて地域を「アップデート」し続けること。
北海道には、豊かな地域資源がたくさんあります。北海道国立大学機構においても、このような観点を踏まえて地域資源を生かし、地域課題の解決を担う機能としての役割を果たすべきと考えています。様々な地域の情報を分析して戦略を立て、次世代の地域リーダーを育成し、イノベーションを誘発する「知の拠点」として地域に貢献したいと考えています。

北海道の豊かな地域資源の例
●小樽商科大学 研究者総覧 長村 知幸 准教授
https://researcher.otaru-uc.ac.jp/profile/ja.db44502bea8c5d59.html
●教員インタビュー 長村 知幸 准教授
https://www.otaru-uc.ac.jp/research/interview/osamura_shougakka/
【さらに詳しく知りたい方へ】 長村准教授の研究にご興味のある方は是非、ワンストップ窓口からお問い合わせください。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
2. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(1)

「フードテック(FoodTech)」という言葉が広く使われるようになりましたが、その中身は多様化しています。植物性代替肉からスマート農業、3Dフードプリンター、食品ロス削減まで、全く別の分野のように見える技術群が、ひとつの言葉に包含されているのが現状です。
今回、フードテックの広がりを目的や技術の切り口から以下のように整理しました。
(1)新たなタンパク源の開発
環境負荷の低減や食料危機への対応を目的に、植物性代替肉、培養肉、昆虫食、藻類タンパク質などの研究開発が進んでいます。これらは持続可能な食の供給を実現するための重要なアプローチとして、世界的に注目されています。
(2)加工・調理技術の進化
3Dフードプリンターや凍結含浸技術など、食の形や食感、栄養価を自在に設計する技術が登場。高齢者向けのやわらか食や、子ども向けの栄養補助食品など、個別ニーズに応える応用が広がっています。
(3)食品ロスと資源循環
規格外野菜や食品副産物を活用したアップサイクル食品の開発も進行中です。北海道では、ホタテの貝殻や未利用魚を再資源化する研究が進められており、地域資源の循環利用が注目されています。
(4)保存・流通の最適化
食品の鮮度を保ちながら無駄を減らす技術も注目されています。北海道では、冬に貯蔵した雪を使って食品を冷却・保存する「雪冷熱」技術が活用されており、再生可能エネルギーとしての可能性も評価されています。
(5)パーソナライズド栄養と健康連携
遺伝子や腸内環境の解析に基づいた食事提案や、AIによる栄養設計など、個人の健康状態や嗜好に合わせた食の最適化が進んでいます。
(6)スマート農業と生産技術の革新
ドローンやセンサー、AIを活用した農業技術が進化し、気候変動や労働力不足といった課題に対応しています。北海道の十勝地方では、広大な圃場を対象にしたスマート農業が実践され、収穫データをもとに加工や流通を最適化する取り組みが始まっています。
(7)食文化と体験の拡張
メタバースでの食体験、AR/VRを活用したレストラン演出、食のサブスクリプションなど、食の楽しみ方そのものを再定義する動きが広がっています。テクノロジーが食文化の新たな可能性を切り拓いています。
このように整理した中で、今回は、
(1)新たなタンパク源の開発
に関して、注目の技術を2つご紹介します。
現在、地球規模での人口増加や気候変動を背景に、持続可能なタンパク源の確保が急務となっています。このような課題に対し、日本で伝統的な発酵技術や藻類活用技術を活かした新たなアプローチが進んでいます。
●麹肉
筑波大学などで研究開発が進められている「麹肉」。酒粕や米ぬかなどの食品副産物を麹菌で発酵させ、得られた菌体バイオマスを肉のような食材として活用する技術です。
目的は、動物性原料に依存せず、環境負荷を抑えた高タンパク食品を創出すること。麹菌は旨味成分や必須アミノ酸を豊富に含み、栄養価と嗜好性の両立が可能とされています。
ヴィーガンや高齢者向けの食材としても期待されています。
●スピルリナ
東京農業大学などで研究開発が進められている「スピルリナ」。スピルリナとは、藍藻(シアノバクテリア)の一種であり、アフリカや中南米で食用とされてきた微細な藻類です。
乾燥状態で約60〜70%がタンパク質という驚異的な栄養価を持つとともに、ビタミンやミネラル、鉄分も豊富に含んでいます。少ない水と土地で培養できるため、環境負荷が極めて低いのが特長です。
現在はサプリメントや健康食品として流通していますが、ジュレ状の食品や宇宙食、医療食への応用も検討されています。
このような研究は、環境と健康の両立を目指す日本発の技術革新として、今後の食のあり方に大きな影響を与える可能性があります。広大な食糧生産地である北海道においても、自然環境や産業構造などの地域特性を踏まえ、独自の視点で研究開発、社会実装を進められればと思います。
北海道国立大学機構は、地域と共に「食の未来」づくりに取り組みたいと考えています。例えば、北海道国立大学機構の帯広畜産大学では、土壌や堆肥の研究、広大なほ場に農薬を効率よく散布する研究、乳牛や肉用牛の健康に関する研究など、スマート農業や栄養・健康、食の安全、さらには経済学に関する幅広い研究が行われています。
帯広畜産大学の研究者ならでの視点で、多様な研究の魅力を紹介する「ぎゅ牛(ぎゅう)~っとちくだい」のページも是非ご覧ください。
https://www.obihiro.ac.jp/gyugyutto-top
お問い合わせは、お気軽にIICワンストップ窓口まで。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
3. 北海道におけるデータセンター誘致と大学の役割

現在、国はデジタル基盤の強化と災害リスク分散の観点から、データセンターの地方分散を推進しています。特に東京圏に集中するデータセンターのリスクを軽減し、全国各地に分散配置することで、安定的かつ持続可能な情報インフラの構築を目指しています。そんな中、北海道はその地理的特性と再生可能エネルギー資源の豊富さから、有力な候補地として注目を集めています※1。北海道国立大学機構の北見工業大学がある北見市にも、データセンター建設の動きがあります。
※1 北海道 「北海道のデータセンター誘致の取組・大型データセンターへの対応について」
https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc_localdemand/pdf/0003_06_00.pdf
北海道は冷涼な地理的特性により、外気でサーバールームを冷却する「外気冷房」方式を採用できるため、一般的な都市型データセンターと比較して約4割もの消費電力を削減できるといいます。
また、北海道は、風力、太陽光、地熱、バイオマスなど多様な自然エネルギーを活用した発電システムが整備されており、再生可能エネルギーの導入率も全国的に高い。
特に道北地域では、風況に恵まれた立地を活かした大規模な風力発電が進んでおり、これを直接活用する形でグリーンデータセンターの整備が始まっています。稚内市では、風力発電と直結した全国初のデータセンターが2027年の稼働を目指して建設予定であり、地域経済や雇用への波及効果が期待されます※2。
※2 稚内市 「稚内市における風力発電所直結型グリーンデータセンター事業の開始について」
https://www.city.wakkanai.hokkaido.jp/sangyo/shoko/kigyoyuchi/datacenter.html
しかしながら、北海道におけるデータセンターの誘致には以下のような課題もあります。
●地方では都市部と比較してIT専門人材の確保が困難になる(専門知識を有するエンジニアの確保)
●データセンターを設置する地域社会との相互理解が不可欠
そのため、これらの課題を解決していくために、北海道に存在する大学は大きな役割を担う必要があるといえます。
➀データサイエンスに精通した人材の育成
情報ネットワーク、サーバー管理、エネルギー制御、冷却技術など、専門的な知識と技術を持つ人材の需要が今後高まることが予想されます。大学はこれに対応するために、関連分野の教育カリキュラムを強化し、実践的なスキルを身につける機会を提供する必要があります。
例えば、北海道国立大学機構の北見工業大学では、数理・データサイエンス・AI教育プログラムを展開しており、学生は学科やコースに関わらず受講できるようになっています。
https://www.kitami-it.ac.jp/wp-content/uploads/2023/06/kit_mdash_leaflet.pdf
さらに北見工業大学では、令和8年度から博士前期課程に新たな「データサイエンスプログラム」の設置を申請。求められる高度情報専門人材の育成に今後も対応していきます。
https://www.kitami-it.ac.jp/dsprogram/pdf/flyer.pdf
➁地域社会との連携と情報発信、研究開発の推進
データセンターの誘致が地域にもたらす影響や可能性について、大学が主体となって公開講座やシンポジウムを開催し、住民との対話を深めることは、地域全体の発展に資する取り組みとなります。
また、再生可能エネルギーの効率的な活用や、データセンターの省エネ運用に関する技術開発は、大学の研究資源を活かすことで大きな成果が期待できます。企業や自治体との共同研究を通じて、地域課題の解決と技術革新の両立を図ることが可能となります。
今後、北海道におけるデータセンターの整備が進む中で、北海道国立大学機構は教育・研究・地域連携の各側面から積極的に関与し、地域の雇用創出や関連産業の発展に寄与するとともに、持続可能な社会基盤の構築に貢献していきたいと考えています。
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