IIC News Letter 第17号(令和8年2月配信)
<IIC News Letter第17号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第17号です。定期的に3大学の教育研究活動や行政・サービス機関、産業界からの最新情報をわかりやすく皆様にお届けします。
目次
1. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(2)
2. 産学連携ってどうやってはじまっている?
3. 地域の宝を「ブランド」に~権利の保護と使い方~
1. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(2)

シリーズ・フードテック第二弾(第一弾はこちら。)。今回は、「加工・調理技術の進化」について調べました。食の「当たり前」を打ち破る加工・調理技術の新時代をご紹介します。
かつて調理は、火と包丁を操る「経験と勘」の世界でした。しかし現在、テクノロジーとの融合により、食は一人ひとりのニーズに合わせて「設計」ができる領域へと進化しています。特に、大学が取り組んでいる技術は、現代の食卓が抱える課題に対して解決する策を提示しています。
■食材の形を崩さない介護食の開発
広島国際大学らが開発した、在宅調理を可能とする「酵素を利用した食材軟化法」。真空装置が必要だった従来の「凍結含浸」技術を改良し、特別な装置を必要とせず、家庭用の冷蔵庫で形状を保持した介護食を簡単に調理できるもの。調理品を「そのまま」の見た目で、介護食のレベルにやわらかくすることができるという技術。在宅での要介護者の調理や、真空装置がない介護施設でも簡単にやわらか食品を作れます。これは、食事を通じたQOL(生活の質)の向上に貢献できる技術です。
■3Dフードプリンターで“印刷”する食の未来
「3Dフードプリンター」によりお米や刺身を作る技術を開発しているのが、山形大学。米を削るときに出る米粉を再利用し、3Dフードプリンターによってお米を再現。粉にした食材は長期保存ができるため、さまざまな粉を用いればフードロスの解決にもつながります。また、原料の栄養やアレルゲンなどを考慮した介護食の開発の他、デジタル技術を活用して食材をデータ化すれば、遠く離れた家族と食事をシェアすることも可能になるかもしれません。
■フードテックをめぐる状況
農林水産省のウェブサイトには、フードテックの状況をまとめた資料が公開されています※。
※農林水産省 フードテックをめぐる状況(2026年2月)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sosyutu/asset/meguji.pdf
世界的な人口増加などによる食料需要の増大や、気候変動などの食料安全保障上のリスクの高まりを背景に、食品産業にも様々な社会課題の解決が求められています。また、健康志向や環境志向など、消費者の価値観も多様化しています。
このような多様な食の需要に対応し、社会課題の解決を加速するためのフードテックを活用した新たなビジネス創出への関心が高まっています。
この資料では、フードテックに関する様々な技術、取り組みが記載されており、第1次産業を基盤とする北海道の方々にも参考になります。
■「おいしさ」と「機能」を調和させる大学の使命とは?
フードテックの進化の本質は、誰もがそれぞれの状況に合わせて「最適な食」を選択できることにあります。
大学が有する知見が活かされることで、食の可能性は無限に広がります。誰もがおいしく食べられる社会の実現。大学の研究室から次々と加工・調理技術を生み出し、私たちの未来の食卓をより豊かなものへとすることが、大学が担うひとつの使命といえそうです。
北海道国立大学機構は、商・農・工の分野融合研究がすすんでいます。フードテックに関しても地域・企業と協力できることがきっとあります。是非ご連絡ください。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
2. 産学連携ってどうやってはじまっている?

「産学連携」って、どこか遠い世界の大規模な共同開発をイメージされていませんか?実際にはもっと身近なところにあります。大学と、企業など関係者との連携の始まり方をご紹介します。
1. 互いの「接点」はどこにある?
連携が動き出すルートは、大きく分けて2つあります。
■現場で行き詰まった切実な課題が大学に持ち込まれる
「自社の技術だけではこれ以上先に進めない」、「自治体としてエビデンスに基づいた施策を打ちたい」といった、切実な現場の声が大学に届くケースです。この場合、大学を「信頼できる相談先」として選んだときから連携が始まります。
■大学が「現場の価値」を再発見する
大学教員や産学連携コーディネーターが地域を歩く中で、「この伝統技術は、実は最新の科学で説明できる」、「この特産品は、医学的な視点で付加価値がつく」といった気づきを得て、大学側からアプローチするケースです。
これらの「接点」から、単なる「取引」ではない「連携」へと動き出します。
2. 「産学連携コーディネーター」という、出会いを加速させる存在
大学の門は、時に重く感じられるかもしれません。また、研究室の知恵をどうやって実社会に活用すべきか、大学教員自身が悩むこともあります。そこで、大学で不可欠なのが「産学連携コーディネーター」の存在です。
産学連携コーディネーターは、双方の思いを繋ぐ「触媒」として動きます。
■「困りごと」を「研究テーマ」へ
企業や自治体からの相談を丁寧に紐解き、どの教員の専門性が最適かを見極め、引き合わせます。
■「知恵」から「事業」を導き出す
大学教員の高度な研究内容を、現場で使える具体的な解決策となるよう、地域のニーズに寄り添う形で提案します。
3. 「小さな成功」を共に創る、地域の大学
地域の大学は、最初から大きな連携を目指すとは限りません。
たとえば、大学教員や産学連携コーディネーターが現場を訪れ、一緒に課題を眺める。次に、学生を交えた短期の調査をしてみる。そうした「顔の見える小さな協力」を積み重ねる中で信頼が生まれ、気づけば地域を支える大きなプロジェクトへと成長する可能性があります。
4. 地域を「1つのチーム」にするために
地域の大学にとって、その周辺の方々は「お客様」ではなく、共に未来を創る「チームメイト」と考えます。
地域の方々からの相談をきっかけに大学が動き出し、また大学からの提案をきっかけに事業が加速する。この双方向のやり取りが活発になることで、地域に新しい価値が生まれます。
5. 最後に~始まりの合図は、何気ない対話から
産学連携の始まりに、決まった形式はありません。1通の問い合わせメールから始まることもあれば、産学連携コーディネーターが現場を訪ねた際の雑談から始まることもあります。
「何か一緒にできないか」という予感があれば、まずはご連絡ください。皆様と共に汗をかき、知恵を絞る準備ができている、専門家とコーディネーターがいます。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
3. 地域の宝を「ブランド」に~権利の保護と使い方~

日本各地には、その土地ならではの美味しい農産物や伝統食品などが数多く存在します。しかし、これらを「地域の宝」として守り、世界に通用する「ブランド」へと育てるには、法律で守られた「知的財産の武器」が不可欠です。
今、注目されている2つの武器である「地域団体商標」と「地理的表示(GI)」、そして大学の知見がもたらした成功事例についてご紹介します。
1. 知的財産の武器
■地域団体商標:名前を独占するための武器
「地域名 + 商品名」からなる名称を、地域団体が登録できる制度です。登録することで、無関係な第三者がその名前を勝手に使うことを防ぎ、ブランドの信頼性を守ります。

地域団体商標マーク
(出典:特許庁 地域団体商標マークとは? https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/mark.html)
■地理的表示(GI):品質を国が保証するための武器
その土地特有の気候や土壌、伝統的な製法が生み出す「高い品質」を、国が公的に認める制度です。厳しい基準をクリアした証として「GIマーク」の使用が認められます。これは、いわば国が認めた「本物の証明書」です。

GIマーク
(出典:農林水産省 地理的表示及びGIマークの表示について https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/gi_mark/)
2. 成功事例
■(事例1):輸出四半世紀の信頼。「十勝川西ながいも」の底力
北海道十勝ではおなじみの「十勝川西ながいも」は、知財戦略を駆使したトップランナーです。2007年に地域団体商標、2016年にはGI登録を果たしました。1999年から続く台湾への輸出は、今や日本の農産物輸出の代表格です。
十勝の冷涼な気候と肥沃な大地が育む「真っ白な肌」と「強い粘り」。GI登録は、この品質が十勝という土地でしか生み出せないことを国が認めたことを意味します。GIマークが付与されることで、海外市場での模倣品との差別化が明確になり、贈答用の高級品としての地位を揺るぎないものにしました。
■(事例2)科学の力で世界へ。大学が支えた「青森の黒にんにく」
今や世界25カ国以上に輸出され、健康食品として不動の地位を築いた「青森の黒にんにく」。2015年に地域団体商標、さらに2022年にはGI登録を果たしました。このブランド化を陰で支えたのが、弘前大学です。
熟成によって黒くなるにんにくは、古くから「健康に良い」と言われてきましたが、その理由は曖昧でした。そこで弘前大学医学部の研究チームが科学的にアプローチ。熟成過程で抗酸化成分が飛躍的に増加することを突き止めました。
この「大学の研究データ」という客観的な根拠は、国内外のバイヤーや消費者の信頼を得る決定的な要因となりました。大学の知見が、地域の産品を「科学的に根拠のある」ブランドへと押し上げました。
3. ブランド化が地域にもたらす「本当の効果」
こうした知財戦略の成功は、単に「有名になる」以上の効果を地域にもたらします。
■農家の所得向上: ブランド化により「安売り競争」から脱却し、適正な価格で販売できるようになります。
■品質の維持・向上: GI登録には厳しい品質管理が求められるため、地域全体で高いクオリティを維持する意識が生まれます。
■地域への誇りと担い手育成: 自分たちの産品が「国に認められたブランド」であるという自負は、次世代の若者が農業を志す大きなきっかけとなっています。
4. 大学と地域が描く、これからの地方創生
「青森の黒にんにく」が示したように、「健康に良い」理由を明らかにした大学の科学的なアプローチと、地域団体商標や地理的表示(GI)登録といった取り組みにより、ブランドが確立しました。
大学の知と地域の情熱、そして知的財産という戦略が重なり合うことで、日本の農業はさらに力強く、世界へと羽ばたいていくことができるでしょう。
北海道には44件の地域団体商標、10件の地理的表示(GI)が登録されています(2026年2月時点)。登録されていないものも含め、地域の宝はまだまだあります。大学と地域が一体となって、知財戦略を立て、より良い地域を作っていくことが大切です。北海道国立大学機構には専門家がいます。是非一緒に実現しましょう。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
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IICニュースレターでは、地域の課題を解決し、新たな価値を共創するための情報を発信しています。また、企業へのインタビューなどを通して、地域の未来をいっしょに考える場づくりにも活用しています。
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