IIC News Letter 第18号(令和8年3月配信)
<IIC News Letter第18号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第18号です。定期的に3大学の教育研究活動や行政・サービス機関、産業界からの最新情報をわかりやすく皆様にお届けします。
目次
1. 5,000社を超えた大学発ベンチャー、次なるステージへ
2. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(第三弾)
3. 【令和6年度最新】文科省データが示す「産学連携」の現在地
1. 5,000社を超えた大学発ベンチャー、次なるステージへ

都道府県別の「大学発ベンチャー数」は、北海道が6位であること、ご存知でしょうか?※1
トップは東京都の1936社。2位以下は大阪府、京都府、神奈川県、愛知県と続き、北海道は6位(165社(2024年度))です。北海道は、令和4年度の94社(9位)から約1.8倍に増加しています。
実は、北海道は「スタートアップ先進地域」といえます。
※1:経済産業省 令和6年度 大学発ベンチャー実態等調査 調査結果概要(https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/start-ups/reiwa6_vc_cyousakekka_gaiyou.pdf)
都道府県別大学発ベンチャー数(出典:経済産業省資料 令和6年度 大学発ベンチャー実態等調査 調査結果概要)

(1) 北海道における大学発ベンチャー
結論から言うと、北海道における大学発ベンチャーの約75%が北海道大学に集中しているのが現状です※2。しかし、近年は北海道大学以外にも独自の専門性を武器に、キラリと光る大学発ベンチャーが出てきています。
※2:文部科学省 令和6年度 大学等における産学連携等実施状況について 様式7(産学連携に係るルール、大学等発ベンチャー) (https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.mext.go.jp%2Fcontent%2F20260212-mxt_sanchi02-000046850_2-07-1-v1.xlsx&wdOrigin=BROWSELINK)
北海道大学の大学発ベンチャーは、創薬、ロボティクス、宇宙、AIなど多岐にわたります。一方で、小樽商科大学や北見工業大学、室蘭工業大学、公立はこだて未来大学、公立千歳科学技術大学などでも数は少ないものの、大学の専門領域に特化した大学発ベンチャーが誕生しています。
現状のデータから、北海道大学は「総合力」、他の大学は地域と密着した「専門突破力」という構図がみえてきます。
北海道国立大学機構の北見工業大学は、寒冷地やインフラ、帯広畜産大学は広大な農地と畜産・獣医・食品、さらに小樽商科大学は経営に関するコンサルティングなど、地域に根差した研究がすすめられており、地域課題を解決する「専門特化型」の大学発ベンチャーが今後も誕生する見込みです。
(2) データで見る「大学発ベンチャー」
経済産業省によると、国内の大学発ベンチャー数は前年度から786社増加し、過去最多の5,074社に達しました※1。
この数字は、単なる起業ブームではありません。大学の知見が社会の課題を解決する「実行力」を持ち始めたことを明確に示しています。
■大学ベンチャー企業数、増加数が過去最多
大学発ベンチャー数は、この10年で約2.9倍に拡大しました。令和6年度は、大学発ベンチャー数、増加数ともに過去最多を記録。注目すべきは業種構成です。「IT(アプリケーション・ソフトウェア)」が約24%、「バイオ・ヘルスケア・医療機器」が約21%を占める一方で、「ものづくり」分野などを含め、全ての分野で堅実に成長しています。近年は、脱炭素社会の実現に向けた「環境・エネルギー(GX)」分野も台頭しています。このような結果は、一朝一夕には真似できない、大学独自のディープテック(深層技術)がビジネスの核になっているという証拠です。
業種別大学発ベンチャー数の推移(出典:経済産業省資料 令和6年度 大学発ベンチャー実態等調査 調査結果概要)
■地域の大学の健闘
大学発ベンチャー数の上位には、東京大学、京都大学、慶應義塾大学といった都市部の総合大学が多く並びますが、伸び率(対令和5年度比)では地域の国立・私立大学の健闘が光っています。この結果から、大学発ベンチャーが都市部の総合大学だけでなく、地域の大学による地域経済の活性化や地元特有の課題解決といった、「地域の生存戦略」へと広がっていると考えられます。
(出典:経済産業省資料 令和6年度 大学発ベンチャー実態等調査 調査結果概要)
(3) 大学発ベンチャーに必要なもの
大学発ベンチャーには、課題もあります。多くの大学発ベンチャーが直面しているのは、「資金調達」と「販路開拓」、そして「経営人材の不足」です。大学には「技術」がありますが、それを「商品」として世の中に出す部分が不足しています。重要になるのが、地域の皆様との共創です。
大学発ベンチャーは、大学の技術を企業の販路や製造ラインと掛け合わせることで、これまでにない高付加価値の商品・サービスを生む可能性があります。大学の研究室の扉は、かつてないほど開かれています。皆様と共に新しい産業を創出できればと思います。
北海道国立大学機構の3大学も、大学発ベンチャーの創出に積極的に取り組んでいます。IICワンストップ窓口まで、お気軽にご連絡ください。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
2. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(第三弾)

シリーズ・フードテック第三弾。今回は、「食品ロスと資源循環」について調べました。全国で取り組みがすすむアップサイクル※3と未利用資源に着目した技術を紹介します。
※3:アップサイクル:これまで捨てられていたものに新しい価値を与え、魅力的な製品として生まれ変わらせること
(1) 全国で加速する「アップサイクル」の実装と「未利用資源」の活用
日本の大学キャンパスは単なる教育の場を超え、社会課題を解決するための「実装現場」へと変貌を遂げています。特に「食品ロスと資源循環」の分野では、これまで廃棄されていた素材にテクノロジーで新たな命を吹き込む「アップサイクル」の取り組みが全国各地で具体化しています。
■明治大学では、豆腐の製造過程で大量に発生する「おから」に着目した産学連携が活発です。おからは、豆腐や豆乳を作る際に副産物として大量に発生する、搾りかすです。食用にされているおからは、現状1%以下ということで、大半は廃棄されるか、家畜の餌や肥料になっています。そこで、おからをサラダチキンやおからグラノーラなどの健康食品へと再生。大学のキャンパス内の食堂で販売されました。
■早稲田大学では、「バイオ炭」の使用によるビール大麦の生育状況や土壌への影響に関する研究を開始。バイオ炭は、未利用のバイオマス資源を高温で加熱して作られる土壌改良資材であり、土壌の透水性向上や炭素貯留の効果があると言われています。バイオ炭を活用することにより、農業における化学肥料や農薬使用の環境負荷を軽減できることから、資源循環型農業の実現が期待されます。
水産資源の有効活用においても、大学の技術が大きな役割を果たしています。
■宮城大学では、規格外の水産物や、市場価値がつかず廃棄されていた未利用魚を活用した食品開発に大学生が取り組んでいます。地元企業と連携し、厄介者とされていた素材を商品として完成させ、魅力をアピールしています。
■近畿大学は、「近大マグロ」、「近大マダイ」などの養殖事業が知られていますが、これまで市場価値がつきにくかった近大マダイの親魚や近代マグロの未利用部分(生食に適さない筋や血合いの部分)を有効活用した、パスタソースやお茶漬け、山椒煮などの新商品を開発しています。未利用資源から新たな市場価値を創造し、持続可能な地域共創モデルの構築がすすめられています。
(2) 北海道の大学が担う、資源循環
日本最大の食糧基地である北海道に位置する大学においても、地域特性を活かした挑戦がはじまっています。
■帯広畜産大学では、十勝の「農」と「畜」を融合して食料全体に関わる問題を解決する取組みが行われています。例えば、活用されていない海藻から乳酸菌を取り出し、「おから」に加えておいしい食材に変身させたり、牛などの家畜ふん尿をバイオマス発電施設で熱エネルギーに変換し、魚の養殖に活用したり、さらに養殖魚の食味を良くするためにワインのしぼりかすを与えたり、など様々な取組みがすすめられています。
■ホタテ生産量が全国一の北海道において課題となっている、大量のホタテ貝殻の再資源化に向けて、北見工業大学では、企業と共同でホタテの貝殻を活用した劣化コンクリートの修復技術を開発しています。高度成長期に整備された道路や橋梁など、老朽化したインフラの整備にこのような新技術のニーズは高いといえます。
(3) 地域と共に、循環の環を広げる
「食品ロスと資源循環」に関するフードテックの本質は、地域にある未利用資源に着目し、それを活かす技術を融合することにあります。
北海道の豊かな資源を、地域の大学は最新のテクノロジーで「価値」へと変換していきます。この挑戦は、大学だけで完結するものではありません。農家、漁業者、地域の企業の方々と協力する必要があります。現場で感じる「もったいない」を、大学の知見を活用して「未来を救う技術」に発展させられる可能性があります。是非、ワンストップ窓口までお気軽にお問い合わせください。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
3. 【令和6年度最新】文科省データが示す「産学連携」の現在地

文部科学省が行った最新の「産学連携」調査結果※4をみると、日本の産業構造は「自前主義」から「外部知見の戦略的活用」へと移行しており、産学連携はもはや特別な選択肢ではなく、企業の持続可能性を支える「インフラ」となりつつあります。そして、企業と大学は事業のパートナーとしての結びつきを強めています。
研究資金の受入額、民間企業との共同研究、そして知的財産の点からご紹介します。
※4:文部科学省資料:大学等における産学連携等実施状況について 令和6年度実績(https://www.mext.go.jp/content/20260212-mxt_sanchi02-000046850_1-01-v2.pdf)
(1)産学連携の調査結果
■研究資金等受入額
令和6年度の研究資金等受入額(共同研究・受託研究・治験等・知的財産)は、約5,313億円と、令和5年度と比べて約593億円増加(12.6%増)しています。
特に受託研究、共同研究の額が高く、企業は大学を「教育の場」としてだけでなく、「研究開発の外注先(R&Dセンター)」として位置づけていると思われます。企業にとっては、自社で高額な実験設備や専門家を抱えるリスクを低減でき、大学の資産をシェアできるメリットがあります。
研究資金等受入額の推移(出典:文部科学省資料 大学等における産学連携等実施状況について 令和6年度実績)
■民間企業との共同研究
民間企業との共同研究は、研究費受入額、実施件数ともに増加しています。また、興味深いのは、実施件数1件あたりの受入額が「300万円未満」のプロジェクトが依然として全体の半数以上を占めているという事実です。
この結果は、大規模な研究費を投じる共同研究だけではないことを示しています。現場の具体的な「困りごと」をピンポイントで解決する、「短期間・低コスト」な連携もあります。現場に密着した課題解決こそが、共同研究件数を押し上げる要因になっていると考えられます。「まずは小さく始める」産学連携が定着してきたことを物語っています。
民間企業との共同研究・受入額規模別実施件数(出典:文部科学省資料 大学等における産学連携等実施状況について 令和6年度実績)
■知的財産権
令和6年度の知的財産権等による収入額は約72.6億円と、令和5年度と比べて約9.5億円減少しましたが、依然として高い水準を維持しています。収入額の内訳は、「特許権(約52.2億円)」が全体の72%を占めています。大学の特許を活用して「売れる技術」が創出されていると考えられます。また、特許権実施以外の収入額のうち、「商標権」は令和6年度も増加しており、模倣品を排除し、地域のブランドを守るなど、ブランド保護が強化されているといえます。
知的財産権等収入額の推移(出典:文部科学省資料 大学等における産学連携等実施状況について 令和6年度実績)
(2)まずは対話しませんか?
北海道国立大学機構の3大学では、寒冷地工学やスマート農業、機能性食品、マーケティング戦略など、北海道地域に根差した研究がすすめられています。
まずは地域の皆様と大学で対話する機会を設けませんか?小さく始めるところからスタートしてもよいと思います。現場にある「小さな気づき」を、「確かな成果」へと繋げるために、IICワンストップ窓口からご連絡ください。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
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