IIC News Letter 第19号(令和8年4月配信)
<IIC News Letter第19号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第19号です。定期的に3大学の教育研究活動や行政・サービス機関、産業界からの最新情報をわかりやすく皆様にお届けします。
目次
1. 【特集】十勝型フードシステム形成プロジェクトが本格始動
2. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(第四弾)
3. オープンイノベーションセンター(ACE)のホームページをリニューアル
1. 【特集】十勝型フードシステム形成プロジェクトが本格始動

――十勝の挑戦を担う、事業者・学生・市民ら130人が集結
令和8年3月27日(金)、とかちプラザ(帯広市)において、「十勝型フードシステム形成プロジェクト」のキックオフシンポジウムが開催されました。当日は、農業・食品関連の事業者、学生、市民の皆さまなど約130名の方々にご参加いただき、十勝の未来を担う新たな挑戦への期待が寄せられました。
本プロジェクトは、内閣府の「地方大学・地域産業創生交付金」を活用し、大学・企業・行政が一体となって「持続可能な地域産業の強化」と「次世代の人材育成」を推進するものです。
――将来の十勝を見据えた持続的な地域発展
開会にあたり、帯広市の米沢則寿市長※、北海道国立大学機構の長谷山彰理事長が、地域経済の好循環と人材育成への強い期待を強調。続いて、本プロジェクトの全体構想について、とかち財団の金山紀久理事長より以下の理念が紹介されました。
「十勝を単なる原料供給地から、価値創出の拠点へと転換する。ICTやロボット技術により省力化、資源循環、高付加価値化を総合的に取り組み、人とお金が地域内で循環する『十勝型フードシステム』の構築を目指します。」
※:肩書はシンポジウム当時。

北海道国立大学機構・長谷山彰理事長
――事業説明:3つの柱による社会実装と大学改革
シンポジウムでは、プロジェクトの中核を担う3名の教授より、具体的な事業内容が発表されました。
■資源循環:堆肥化ロボットによる持続可能な農業(宮竹史仁 帯広畜産大学教授)
化学肥料の価格高騰や環境負荷が課題となる中、データに基づいた「次世代堆肥化ロボット」の開発について説明。経験に頼らない発酵管理で高品質な「完熟堆肥」を安定生産し、耕種と畜産が連携した資源循環農業を構築します。
■高付加価値化:未利用資源から新商品を創出(福田健二 帯広畜産大学教授)
これまで廃棄され、十分に利用されてこなかった「初乳」や「チーズホエイ」の活用に焦点を当てます。500株以上の独自乳酸菌ライブラリーや最新の乳加工技術により、機能性を保持した次世代製品の開発を通じて健康志向市場の創出と乳製品需要の拡大を目指します。
■人材育成:3大学連携による文理融合教育(岩本博幸 帯広畜産大学教授)
帯広畜産大学、小樽商科大学、北見工業大学の3大学が連携して農学・商学・工学を横断的に学ぶ教育を展開。「フードバリューチェーン」の視点から付加価値を創出・最大化し、ビジネスを俯瞰的に構想できる実践的人材を養成します。
――トークセッション:現場とAI活用・教育
トークセッションでは、現場でのAI活用や教育のあり方について活発な議論がなされました。
■AIの役割: 「技術ありきではなく、コストを踏まえて現場での使いやすさを重要視(宮竹教授)」、「AIを仮想顧客(ペルソナ)として活用し、より高いレベルで現場のニーズを深掘りする力が必要(岩本教授)」といった、現場を重んじる姿勢が強調されました。
■実践的な学びの場: 令和9年度より開講予定の「チーズ学」など、学内の製造現場を活用したユニークな教育体制が紹介されました。大学を「ここに来なければ学べない」特別な学びの場にするとともに、社会人教育や社員研修、スキルアップの場としても活用していく方針が示されました。
――結び:10年後の出口イメージ
シンポジウムの締めくくりとして、3名の教授からは「良質な堆肥が当たり前に流通する社会」、「『未利用資源』という言葉がなくなる酪農産業」、「産学官金が共創する人材育成エコシステム」といった10年後のビジョンが共有されました。
帯広畜産大学の長澤秀行学長は、「予算ありきではなく、地球規模の課題に向き合い、新たな産業や雇用を生み出していく。地域とともに学び、ともに育つ場をつくりたい」と決意を述べ、シンポジウムを締めくくりました。
【アーカイブ動画の公開】
当日の熱気あふれる議論の様子を、より詳しくご覧いただけるよう、アーカイブ動画を公開しております。ぜひ下記よりご視聴ください。
・開会挨拶:https://www.youtube.com/watch?v=tIHoAjCEW-A&t=3s
・事業理念紹介:https://www.youtube.com/watch?v=F28-de1Vluo
・取組事例➀:https://www.youtube.com/watch?v=gbWf-EufKWg
・取組事例➁:https://www.youtube.com/watch?v=vh_Z3mDijIk
・取組事例➂:https://www.youtube.com/watch?v=LOeEI2U6U6U
・トークセッション・閉会挨拶:https://www.youtube.com/watch?v=Pw8BCEedgUg&t=1s
・プロモーションビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=bVBLPj3hVEA&list=PLEsPAeJqZXDjqti2Xxq0IgmqyqS1u9wGn&index=7
本プロジェクトは始まったばかり。北海道国立大学機構は地域の皆さまとともに、十勝、そして日本の食の未来を切り拓いてまいります。皆さまのご支援とご参画をお願いいたします。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
2. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(第三弾)

シリーズ・フードテック第四弾。今回は、「食品の保存と流通最適化技術」について調べました。
「食品の価値を守るには、高度な「保存」と滞りない「流通」の同期が不可欠です。食品の劣化を最小限に抑える技術と、その品質を保ったまま効率的に運ぶ仕組み。これらの最適化に挑む大学の研究は、産地の鮮度をそのまま食卓へ届けるとともに、無駄のない食の未来を支えています。
――科学的なアプローチによる食品の保存技術
■帯広畜産大学:雪氷を活用した次世代の農産物貯蔵システム
冬の冷気で凍らせた「氷」の力を利用し、夏まで低温・高湿度な環境を維持する「アイスシェルター」を研究。電力をほぼ使わず、自然の相変化のみで鮮度を守るこの技術は、農作物の長期貯蔵に適しており、収穫された農作物の省エネ貯蔵が可能となります。
■東京海洋大学:不凍タンパク質による氷の再結晶化抑制
冷凍食品は保存中に、氷の結晶が成長する「再結晶化」が起こり、食感の悪化やドリップ(食品の細胞から流れ出る水分やうま味成分)流出を招きます。そこで、寒冷な環境に生きる生物が体内に持っている「不凍タンパク質」を活用し、氷の再結晶化を抑える技術を研究。高品質なまま長期保存を可能にするメカニズムの解析に取り組んでいます。
■大阪公立大学:冷蔵保存でも硬くならない「過熱水蒸気」炊飯技術
100度以上の「過熱水蒸気」を用いて、米の微細構造を変化させる革新的な炊飯技術の研究が進められています。この手法で炊いた米は多孔質になり、冷蔵時のデンプンの劣化を抑制できることが判明。お寿司や給食など、冷蔵保存が必要な現場の課題を解決する技術です。
■東洋大学:フードロスを防ぐ「ガス置換包装(MAP)」技術
容器内の空気を窒素や二酸化炭素に置き換え、菌の増殖を抑えて鮮度を保つ「ガス置換包装(MAP)」技術。食品ごとに最適なガス配分を解明することで、食品の消費期限を延長。廃棄削減に加え、生鮮食品の海外輸出など新たな可能性を広げています。
――最適な流通システムの構築技術
■東京大学:数理科学で物流の「最適解」を導き出す先端研究
急増する物流需要に対し、数理モデリングやAIを駆使した効率的な配送ルートや在庫管理を導き出す研究が進められています。ドローンや衛星データの活用、現場の走行ルートの最適化など、最新技術で無駄のない物流を設計。理論と実践を融合させ、科学的な視点から次世代の流通システムを構築しています。
■九州大学:農産物流通の鮮度を守る「ポストハーベスト技術」
収穫後の農産物は呼吸や微生物により品質が低下します。そこで、乾燥や低温流通、貯蔵、加工などの技術を組み合わせた「ポストハーベスト技術」を研究。菌の増殖やバイオフィルムの形成を科学的に制御することで、安全で新鮮な農産物を安定的に消費者へ届ける流通システムの構築を目指しています。
――大学におけるイノベーションと社会実装
大学は単なる研究機関を超え、技術を社会へ実装する「イノベーションの起点」としての役割を担っています。社会の課題解決を見据え、現象の解明から応用へと繋げる研究開発が大学の強みです。企業との連携やスタートアップを通じて研究成果をビジネスに直結させ、社会の新たなスタンダードを創出しています。
「食品の保存と流通最適化技術」は、最先端の技術と社会の仕組みが合わさって初めて完成します。大学の研究が企業のビジネスモデルを強固にし、持続可能な食の未来を支えるインフラとなるよう、北海道国立大学機構も挑戦を続けてまいります。商・農・工に強みを持つ北海道国立大学機構に、まずはご相談ください。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
3. オープンイノベーションセンター(ACE)のホームページをリニューアル

このたび、北海道国立大学機構オープンイノベーションセンター(ACE)のホームページを全面的にリニューアルいたしました。
今回のリニューアルでは、閲覧のしやすさや情報へのアクセス性の向上を重視し、構成やデザインを見直しております。
これにより、オープンイノベーションセンターに関する最新のニュースや各種イベント情報を、スムーズにご確認いただけるようになりました。利用者の皆さまが必要な情報に迅速にアクセスできる環境を整えております。
さらに、新たに「オープンイノベーション研究事例ページ」を開設いたしました。本ページでは、オープンイノベーションセンターに関連する多様な研究事例を紹介しており、今後も内容の充実を図りながら、順次情報を追加してまいります。
ぜひリニューアルしたページをご覧いただき、今後の取り組みにもご注目いただけますと幸いです。
・オープンイノベーションセンター(ACE)ホームページ:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/ace/
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IICニュースレターでは、地域の課題を解決し、新たな価値を共創するための情報を発信しています。また、企業へのインタビューなどを通して、地域の未来をいっしょに考える場づくりにも活用しています。
今後、こんな特集をしてほしい、もっとこういう取組みが必要だ、といったご意見、ご要望もお待ちしています。お気軽にお問合せください。
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