IIC News Letter 第5号(令和7年2月配信)
<IIC News Letter第5号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第5号です。定期的に三大学の教育研究活動や行政・サービス機関、産業界からの最新情報を分析・整理して皆様にお届けします。
目次
1. 研究紹介:未来のエコ素材「バクテリアセルロース」
2. 発展する防災テック
3. 地方創生2.0
4. 特許情報
1. 研究紹介:未来のエコ素材「バクテリアセルロース」
小樽商科大学には、化学分野の研究を行っている研究者がいます。一般教育系の沼田ゆかり教授は、微生物であるバクテリアが作り出す素材「バクテリアセルロース」について研究しています。
バクテリアセルロースは、非常に細かいセルロース繊維が網目構造を形成し、軽量でありながら高い強度と耐久性を有するとともに、生体適合性や保水性が高いというユニークな特性もあります。また、自然環境中で完全に分解されるため、環境への負荷が少ない点も特徴です。
実は、デザートとして知られるナタデココはバクテリアセルロース繊維の網目構造の中に水が保持されたものです。ナタデココは、ココナッツ果実の内部に蓄えられたココナッツ水に、酢酸菌を含む微生物を加えて発酵させることによって作られています。
沼田教授は、バクテリアセルロースを用いて、温めると軟らかくなる温度応答性ゲル(図面(上))や、人体に貼付するために触感と物性を改良した薄膜(図面(下))等、医療や化粧品分野での応用が期待される新しいゲル材料や環境配慮型素材を目指したシートの開発を行っています。
小樽商科大学 沼田ゆかり教授 教員インタビュー:
https://www.otaru-uc.ac.jp/research/interview/numata_ippankyoiku/
バクテリアセルロースを用いた新規材料の創製
(上)温度応答性ゲル。温めると軟らかくなる。
(下)触感と物性を改良したバクテリアセルロース。腕へ貼付した様子。
2. 発展する防災テック
防災テックとは、防災とテクノロジーを組み合わせた造語です。自然災害を予測、防止し、あるいは早期復旧を可能とし、被害を最小限に抑える取り組みがすすんでいます。
例えば、AIや機械学習を活用した災害予測技術は、膨大なデータを解析して地震や洪水等の自然災害を高精度で予測し、事前に警報を発信して避難を促します。また、IoT技術の進化に伴って、センサーを用いて地震の初期の揺れを感知したり、河川・ダム等の水位や気温をリアルタイムで監視したりできるようになっています。
さらに、ドローン技術も大きく進化しており、被災地のアクセスが困難な場所でもリアルタイムで被害状況を把握でき、孤立地域に物資を輸送する等、効率的な救援活動が可能となっています。
このようにAIやIoT、ドローン技術が取り入れられた防災テックの発展は、新たなビジネスをもたらすといわれています。
北見工業大学の「地域と歩む防災研究センター(SAFER)」を含む、北海道国立大学機構・三大学でも、防災技術の課題を地域で共有するとともに、防災研究とその成果を社会に還元する取り組みがすすめられています。
地域と歩む防災研究センター(SAFER):
https://kit-safer.com/
3. 地方創生2.0
10年前に開始された「地方創生」により、全国各地で様々な取り組みが行われましたが、東京圏への一極集中は解消されず、人口減少は想定を超えるペースですすんでいます。
「地方創生2.0」は、これまでの地方創生の取り組みを踏まえ、人口が減少しても経済成長し、社会を機能させる策を講じるものであって、若者や女性にとって魅力のある職場や暮らしを実現し、都市と地方の結びつきを円滑化するための政策として打ち出されました。
その基本構想は、➀安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生、➁東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散、➂付加価値創出型の新しい地方経済の創生、④デジタル・新技術の徹底活用、⑤「産官学金労言」の連携など、国民的な機運の向上、という5本柱からなります。
このような地方創生2.0の取り組みを実現させるための具体的な支援策として、「新しい地方経済・生活環境創生交付金(第2世代交付金)」が創設されます。
地方創生2.0は、単なる地方の活性化策ではなく、日本全体の活力を取り戻し、多様性の時代の多様な幸せを実感する社会の実現を目指すものです。地域資源やデジタル技術の活用、地域内外との連携強化を通じて、北海道国立大学機構・三大学もこのような社会の実現に向けて取り組んでいます。
4. 特許情報
機構・三大学が有する知的財産権を順次ご紹介しています。共同研究やライセンス契約をご検討の際にご活用ください。
IIC News Letter 第5号では、以下の特許をご紹介します。内容は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面の記載に基づいてまとめたものです。
機構・三大学の特許等、知的財産にご興味がある方は、ワンストップ窓口にお問い合わせください。
特許第6590236号
平板や粒子等のコア材料の表面に、簡便にペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する方法を開発しました。ペロブスカイト型複合酸化物触媒(水素製造を指向した水蒸気改質用触媒)や、燃料電池の電極材料、電子材料(例えば、誘電体材料)等への応用が期待できます。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
特許第6435119号
カーリング競技の試合情報入力を容易に、かつ直感的に行うことができます。また、チームや個人のショット率をリアルタイムで計算、表示できるため、戦術の立案や指導に活用できます。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
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