IIC News Letter 第6号(令和7年3月配信)
<IIC News Letter第6号>
北海道国立大学機構の産学官金連携統合情報センター(IIC)がお届けするIIC News Letter第6号です。定期的に3大学の教育研究活動や行政・サービス機関、産業界からの最新情報を分析・整理して皆様にお届けします。
目次
1. 研究紹介:広大な圃場を効率的に管理する最新ドローン技術
2. 減少する出生数と新規就農者、その対策とは
3. 決め手はデータ活用~施設園芸の再生狙う高知県
4. 特許情報
1. 研究紹介:広大な圃場を効率的に管理する最新ドローン技術
帯広畜産大学 環境農学研究部門の川村健介准教授は、ドローンを用いた最新技術により、広大な牧草地を効率的に管理する研究を行っています。
ドローンにはカメラやセンサーが搭載されており、これを使って空から牧草地を撮影することで、例えば植生の判別や放牧地の牛糞分布を把握することができます。植生の判別により、生育状況や雑草の分布などを把握して牧草の管理がしやすくなりますし、牛糞の分布を調べることで、土壌への栄養供給だけでなく温室効果ガスの排出も管理することができます。
ドローンを活用する利点は広い範囲を迅速に撮影できることであり、人が歩き回って調べる手間が省け、労力を減らすことができます。その一方で課題もあります。撮影した画像の地上解像度が低いと、対象物を識別するのが難しくなってしまうことです。地上解像度を高くするには、ドローンを低い高度で飛ばして撮影する必要がありますが、特に北海道のような広大な圃場の場合には飛行時間が非常に長くなってしまい、バッテリーの交換に手間がかかってしまいます。
そこで川村准教授は、ドローンの飛行高度や飛行時間、地上解像度の関係を調べ、目標とする判別精度のデータを短時間で効率よく得るために必要な飛行パラメータについて研究をすすめています。さらに、ドローンとAI(人工知能)技術を活用して、より精度の高いデータを収集する研究も行っています。
このようなドローンを活用した技術は、適切な肥料の使用など、精密な圃場管理を可能にし、農業の効率化と持続可能な食糧供給に役立つと考えられます。
図1 ドローン空撮画像(左)と土地被覆分類図(右)
図2 ドローン空撮画像による牛糞の検出
帯広畜産大学 教員紹介 川村健介准教授:
https://www.obihiro.ac.jp/faculty-r/kensuke-kawamura
帯広畜産大学 草地生態学研究室Webページ:
https://univ.obihiro.ac.jp/~grassland/index.html
2. 減少する出生数と新規就農者、その対策とは
北海道の出生数と新規就農者はともに、10年前と比較して30%以上も減少しています。出生数の減少により若年層が減少し、結果として農業従事者の後継者不足が生じて地域産業に深刻な影響を与えます。
そのため、北海道では交付金による子育て支援に加え、農業従事者を確保する取り組みがすすめられています。例えば、平成24年度に開始された就農支援(農業次世代人材投資資金)や農業体験プログラムなどによって、農業経営体の支援、地域農業の振興、外国人技能実習生の受け入れが行われています。また、地域連携や農業の効率化を図る技術革新もすすめられています。
北海道国立大学機構・3大学も、様々な研究開発を通じて地域に貢献する取り組みを継続して行っており、地域とともに持続可能な発展を目指しています。例えば帯広畜産大学には、農畜産プロフェッショナル経営人材プログラムの取り組みがあります。是非ご検討ください。
農畜産プロフェッショナル経営人材プログラム:
https://univ.obihiro.ac.jp/~agri-pro/tp_detail.php?id=87
北海道 新規就農者実態調査(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/gjf/170311.html)、及び住民基本台帳人口・世帯数(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tuk/900brr/index2.html)に掲載されたデータに基づいて記事を作成しています。
3. 決め手はデータ活用~施設園芸の再生狙う高知県
高知県では、経験や勘に頼った農業から転換を図るために、得意とする施設園芸分野でAIやIoT技術を活用するIoP(Internet of Plants)プロジェクトがすすめられています。これは「データを活用する農業」といえるものであり、ハウス内の環境データや気象データ、出荷量データなど、様々なデータを集積して効果的に活用するものです。
また、高知大学では、「IoP共創センター」を設立してIoP研究を行うとともに、研究成果を活用して次世代農業を担う人材の育成を行っています。さらに、オランダのワーヘニンゲン大学から研究者を招いたり、高知工科大学や高知県立大学と連携したりと、研究連携強化にも取り組んでいます。
このIoPプロジェクトは、政府の「地方大学・地域産業創生交付金」により支援される産学官連携のプロジェクトです。高知県内では、農家の約20%がこのような「データを活用する農業」を取り入れ、ナスやキュウリの収量が大幅に増加したという大きな成果も得られています。
4. 特許情報
北海道国立大学機構・3大学が持っている知的財産権を順次ご紹介しています。今回は、「潮流発電エネルギーの安定供給システム」と「皮膚の老化を防ぐ新技術」の2件。共同研究やライセンス契約検討の参考にしてください。
内容は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面の記載に基づいてまとめています。ご興味がある方は、ワンストップ窓口までお問い合わせください。
特許第6095109号
潮流発電を含む自然エネルギーを、安定供給するシステムに関する発明です。この発明は、潮流発電の他に、燃料電池発電と太陽電池発電の装置を備えており、送電網の電力負荷と、複数の発電装置の発電量を検出し、電力負荷と発電量の差に基づいて燃料電池発電の発電量を制御するものです。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
特許第5772678号
野菜や海藻から抽出した成分で、皮膚の老化を防ぐ技術の発明です。人は皮膚に存在するヒアルロニダーゼによってヒアルロン酸が分解・減少することによって老化します。そのため、「ヒアルロニダーゼ阻害活性」を有するものは美容に有用とされています。この発明は、ニンジンやコンブ仮根の抽出液から所定の水溶性高分子成分を得るものであり、この成分は、保水性、吸水性に優れ、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有することが確認されました。
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
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産学官金連携統合情報センター(IIC)
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E-Mail:iic@office.nuc-hokkaido.ac.jp
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