IIC News Letter 第21号(令和8年6月配信)
<IIC News Letter第21号>
北学機構IICがお届けするニュースレターです。研究や人材育成の取り組み、行政・サービス機関、産業界からの最新情報をわかりやすく皆様にお届けします。
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目次
1. 地域課題の解決を加速~北学機構と道総研が包括連携協定を締結~
2. 大学発スタートアップ~北学機構の精鋭研究者がCIC東京で発表~
3. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(第六弾)
1. 地域課題の解決を加速~北学機構と道総研が包括連携協定を締結~

――包括連携協定の締結について
2026年6月9日、国立大学法人北海道国立大学機構(以下、北学機構)と地方独立行政法人北海道立総合研究機構(以下、道総研)は、包括連携協定の調印式を行いました。この協定は、大学と研究機関がそれぞれの強みを生かして連携し、北海道における地域課題の解決、新たな価値創出、人材育成の強化につなげることを目的としています。
北学機構は小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学の3大学で構成され、商学・農学・工学の幅広い分野で教育研究を行っています。一方、道総研は農業、工業、森林、水産、食品、環境などの分野で、道内各地の研究拠点を活かしながら現場に密着した試験研究や技術支援を行っています。
――シーズとニーズをつなぐ連携の強化
今回の連携の大きな特徴は、北学機構が有する「シーズ(研究成果・新技術・学術的知見)」と、道総研が現場で把握している「ニーズ(地域や産業の課題・実証データ)」を結びつける点にあります。これにより、大学で生まれた研究成果を現場で活用しやすくするとともに、現場課題を研究へと反映させる双方向の関係が強化されます。
北学機構 長谷山理事長 「北学機構と道総研が互いに触媒になることで、分野融合的な研究と人材育成の相乗効果が得られる」
道総研 小髙理事長 「定期的な人材交流の機会によって共同研究を促進し、良い成果を発信したい」
――教育・研究・社会実装への広がり
今回の連携は研究面と人材育成の面で重要な意味を持ちます。大学の学生にとっては、道総研の研究現場やフィールドは、地域課題に直接触れながら学ぶことができる実践的な場となります。講義や研究で得た知識を現場と結びつけることで、より実践的な課題解決能力の向上が期待されます。
教員にとっても、地域のニーズに基づく研究や学生のインターンシップなどが可能となり、研究成果の社会実装や若者の地元定着がより進むことが期待されます。
――北海道全体をフィールドとした知の連携へ
北海道は広大で地域ごとに産業構造や自然環境が異なり、多くの課題を抱えています。そのため、単一の機関だけで解決を目指すのではなく、それぞれの強みを持ち寄ることが重要です。この協定は、北学機構と道総研が北海道全体を「学びと実証のフィールド」として共有し、連携を強化する取り組みといえます。
今後は共同研究の具体化と人材交流の仕組みづくりをすすめ、分野横断的な連携をさらに発展させていく予定です。北学機構と道総研の協力により、北海道における研究開発と地域貢献をさらに促進していきます。

2. 大学発スタートアップ~北学機構の精鋭研究者がCIC東京で発表~

2026年6月4日、「北海道国立大学機構発スタートアップの可能性 ~地域と大学が動かすイノベーション~」がCIC東京(東京都港区)において開催されました。
このイベントは、北学機構における研究シーズを起点として、スタートアップの創出や、事業化の可能性について共有することを目的としたものです。
――北学機構の紹介とトークセッション
冒頭、北学機構の西井 準治 理事から、3大学(小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学)が紹介されるとともに、続いて行われた、あずさ監査法人の阿部 博 常務執行役員とのトークセッション「地域と大学が動かすイノベーション」では、研究成果の社会実装やスタートアップ創出の取り組み、教育と人材育成の在り方について議論されました。
この中で、研究成果を社会で役立てるためには、技術開発だけでなく、学生や若手研究者が早い段階から事業化や社会課題の解決を意識すること、北学機構で学んだ学生が北海道に根付くように、教育と地域を結びつけることが重要であることが示されました。
――発表された研究シーズ
その後、北学機構に所属する研究者によるスタートアップシーズのピッチが行われました。
(研究シーズ1) 「AIおよび培地プロファイリングによる産業バイオプロセスの設計」:
微生物が目的の物質をより多く作れるように、AIを使ってよく育つ培地の条件を短時間で見つける研究(北見工業大学 小西 正朗 教授)
(研究シーズ2) 「植物由来の天然香料生産をブーストさせる」:
ハーブの生育に適したオホーツクで、地元住民や国内外の企業とも連携しながら香料の生産拠点を目指す研究(北見工業大学 陽川 憲 准教授)
(研究シーズ3) 「ドローン/人工衛星とAIによる草地診断技術の開発」:
リモートセンシングとAIを活用し、草種を広域に判別・評価できる技術に関する研究(帯広畜産大学 川村 健介 准教授)
いずれもバイオテクノロジー、農業、AI、リモートセンシングといった分野を横断する研究であり、成果の社会実装、地域課題の解決を強く意識した北学機構の精鋭研究者による発表でした。
――研究シーズと社会実装への期待
発表されたバイオプロセス設計、天然物質の生産技術、農業分野におけるデータ活用といったスタートアップシーズは、それぞれの専門分野における研究成果を基盤としながら、実社会での応用を見据えた内容となっております。
今後、どのように実証・応用へとつなげていくかがカギとなります。技術展開や事業化にご期待ください。
――今後の展望
北学機構では、研究シーズを起点としたスタートアップ創出に向けた取り組みを進めており、今後も持続的な研究成果の社会実装と人材育成、地域との接続強化に取り組みます。
北学機構発スタートアップに関心のある方は、以下の窓口までご連絡ください。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
3. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(第六弾)

シリーズ・フードテック第六弾。今回は、「スマート農業・生産技術」について紹介します。
スマート農業の実現に向けて、大学では生産現場の省力化や高精度化を目指した研究が進められています。近年、運搬・収穫・計測・制御など農業プロセス全体を対象に、ICTやAI、ロボット技術を組み合わせた技術開発が注目されています。
――北海道国立大学機構(北学機構): 収穫物の運搬を支えるトラック運転支援技術
サイレージ原料など、収穫物の運搬作業において、経験の浅い作業者でも安全かつ円滑にトラック運転ができるように支援する技術の開発が進められています。
3D-LiDARでハーベスタとトラックの距離を計測し、カメラで積み込み状況を把握しながら、タブレット端末などを用いて適切な走行や作業位置をリアルタイムで誘導する仕組みです。
また、圃場で発生した危険情報を作業者間で共有できる機能も備え、現場の安全性向上と作業の省力化を両立する技術として実証が進められています。
――北海道大学: 無線通信とロボットによる遠隔監視型スマート農業技術
農作業の人手不足に対応するため、ICTとロボットを活用した自動化技術の研究が進められています。現在はロボット農機を人が近くで監視しながら作業していますが、将来的には複数のロボットを遠隔から同時に管理する運用を目指しています。
そのためには、作業データを伝える通信と圃場映像を伝送する通信の安定運用が必要です。無線通信は環境によって品質が変動するため、状況に応じてロボットの動作や映像伝送を調整し、安全性を確保する技術の開発が進められています。
少人数で複数圃場の農作業管理が可能になることが期待されています。
――千葉大学: 営農型太陽光発電における作物別収量への影響評価と適応品種の探索
農地の上に太陽光パネルを設置し、その下で農業と発電を両立する営農型太陽光発電について、水稲・大豆・サツマイモを対象に収量への影響を調べる研究が進められています。
その結果、収量への影響は作物の種類や品種、遮光の程度によって異なり、水稲では比較的影響が小さい一方、大豆やサツマイモでは全体として収量の低下が見られました。しかし、サツマイモは品種による差があり、太陽光パネルの下でも収量を維持できるものがあることもわかりました。
作物や品種の選び方を工夫することで、農業生産とエネルギー生産の両立が可能になることが示されました。
――岡山大学: AIと複眼カメラによる果実・野菜の空間計測技術
果物や野菜の収穫ロボット開発に向けて、対象物の位置や大きさを正確に測定する空間計測技術の研究が進められています。従来は曇りや雨の日など、その日の光によって計測精度が影響を受けるという課題がありました。
そこで、複眼カメラとAI画像処理を用いることで、明るさの変化に左右されにくい計測を実現。これにより、日向と日陰など光環境が異なる条件でも、果物や野菜の位置や寸法を高精度に測定できることが確認されました。
また、対象物の写真を事前に登録することで、さまざまな対象物に対応した計測が可能となる仕組みも構築されています。
――琉球大学: 収穫前の品質を“見える化”する技術
マンゴーなどの果物について、外観の画像解析や特殊な光を使った測定技術を活用し、果実を切ったり傷つけたりすることなく、糖度や熟し具合、色の状態などを調べる研究が進められています。
これにより、これまで農家の経験や目視に頼っていた品質の判断を、数値データとして客観的に確認できるようになります。
その結果、収穫のタイミングをより正確に決められるようになり、味や品質のばらつきを減らすことができます。安定した生産と高品質化を支える技術1つとして期待されています。
これらの研究は、農業の各工程を個別に高度化するだけでなく、データとロボットを基盤とした統合的な農業システムの構築につながるものです。今後は技術の社会実装とともに、現場に適応した運用モデルの確立が重要になります。
北学機構では、紹介したトラック運転支援技術以外にも、営農型太陽光発電や、果物や野菜の収穫ロボットに関する研究など、スマート農業・生産技術に関する研究を積極的にすすめています。
フードテックに関する研究に興味のある方は、商・農・工に強みを持つ北学機構にまずはご相談ください。
●IICワンストップ窓口:https://www.nuc-hokkaido.ac.jp/iic/iic-contact/
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