IIC News Letter 第22号(令和8年7月配信)
<IIC News Letter第22号>
北学機構IICがお届けするニュースレターです。研究や人材育成の取り組み、行政・サービス機関、産業界からの最新情報をわかりやすく皆様にお届けします。
取得した知的財産権をご紹介。図を選択すると詳細へ
目次
1. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(第七弾)
2. 政府の成長戦略17分野から考える、北学機構の挑戦
3. 北学機構の知的財産権
1. 【シリーズ:フードテック】多様化する「食の未来」を考える(第七弾)

シリーズ・フードテック第七弾。今回は、「デジタル技術による食体験の拡張」について紹介します。
AIやAR/VR、味覚情報のデジタル化などにより、味や食感、見た目といった食の感覚を再現・変化させる研究が進んでいます。
食べる行為そのものを拡張し、新たな食の楽しみ方や価値を生み出す技術に注目です。
――明治大学:料理名や画像から料理の味がわかる技術
料理名や料理の画像をもとに、AIが味を推定し、産地や品種による味の違いまで再現できる調味技術が開発されています。
この技術では、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の基本五味に辛味などを加えた複数の味液を混ぜ合わせることで、さまざまな食品の味わいを再現します。20種類の味液を細かく制御できるため、ワインやカカオ、梅干しなどの産地や品種による味の違いを表現できるほか、特定の味を弱めることも可能です。
また、旅先で撮影した料理の写真から味を再現することもでき、食の体験を広げる新しい技術として期待されています。食品産業をはじめ、教育、観光、エンターテインメントなど、幅広い分野での活用が見込まれています。
――オハイオ州立大学:食品の味をデータ化し、いつでもどこでも味わえる技術
食品の味をデータ化し、離れた場所や仮想空間でも同じような味を再現できる技術が開発されています。
この技術は、センサーで食品の味を読み取り、そのデータをもとに舌に装着した装置が甘味・酸味・塩味・苦味・うま味などに対応する化学物質をごく少量放出し、味を再現します。
研究では、レモネードの味をデータとして遠く離れた場所に送り、別の場所にいる人が同じ味を感じられることや、仮想空間で調理した料理の味を再現できることが実証されています。
将来的には、食品を購入する前の試食や、メタバース、ゲームでの味覚体験、味覚障害への対応、食事制限のある人が食の楽しさを体験する方法など、さまざまな分野での活用が期待されています。
――東京農工大学:生成AIとVRで食感を体験できる技術
生成AIとVRを活用し、実際に食べているような食感を仮想空間で体験できる技術が開発されています。
この技術は、食品名を入力するとAIが料理の画像や3Dモデル、食べるときの音、硬さや弾力などのデータを生成します。それらをVRや触覚デバイスと組み合わせることで、実際に食事をしているような感覚を体験できます。
従来は、食品ごとに画像や音、食感などのデータを個別に集める必要がありましたが、生成AIを使うことで、多くの食品だけでなく、空想上の料理にも対応できるようになりました。
視覚・聴覚・触覚を組み合わせた臨場感のある食体験を実現できるため、食事に課題を抱える人の生活の質の向上や、新しい食体験の創出など、幅広い分野での活用が期待されています。
――香港城市大学:空気の力で食感を体験できるVRデバイス
実際に食品を食べなくても、噛んだときの「かたさ」や「粘り」といった食感を体験できるVRデバイスが開発されています。
このデバイスは顔に装着して使い、顎の動きを読み取ります。その動きに合わせて空気の力で顎に抵抗を加えることで、食品ごとの硬さや粘りの違いを感じられる仕組みです。
VR空間の中で食べ物を噛む動きと連動して動作することが特徴で、味や香りなどの感覚と組み合わせることで、より本物に近い食事体験を楽しむことができます。
将来的には、離れた場所にいる人との食事交流や、食べる機能を支援するリハビリテーションなど、さまざまな分野での活用が期待されています。
――奈良先端科学技術大学院大学・東京大学:VR空間で現実の食事を楽しむための食品表示技術
ゲームやアニメのような仮想世界の中で、現実の食事を楽しめるようにする技術が開発されています。
この技術は、ヘッドセットに搭載されたカメラで現実の食品を撮影し、食品の部分だけを取り出してVR空間に表示します。これにより、現実の食べ物と仮想世界を組み合わせた食事体験が可能になります。
手に持った食品を動かしたり、食べ進めた状態をVR空間に反映したりすることもでき、実際の食品を使いながら、仮想世界への没入感を保ったまま食事を楽しめます。
将来的には、現実には存在しない風景の中で食事をするなど、これまでにない新しい食体験の実現につながることが期待されています。
――奈良先端科学技術大学院大学・電気通信大学:AIとARで食品の見た目を変え、味の印象を変える技術
AIとARを使って、実際に食べる食品の見た目を別の料理のように変え、味の感じ方に影響を与える技術が開発されています。
この技術は、AIが食品の色や形などの特徴をリアルタイムで変換し、ARによってその映像を実際の食品に重ねて表示します。食べ物そのものを変えることなく、見た目を変えることで、別の料理を食べているような感覚を体験できます。
例えば、そうめんをラーメンや焼きそばのように見せたり、白ご飯をチャーハンのように見せたりすることが可能です。
見た目から受ける印象が味の感じ方に与える影響を活用し、これまでにない新しい食体験を生み出す技術として注目されています。
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これまで、2026年1月から7月のニュースレターにわたって、「フードテック:多様化する食の未来を考える」と題して技術を紹介してきました。
第七弾でいったん完結となります。今後も、北海道の地域産業に関わる技術をご紹介します。
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2. 政府の成長戦略17分野から考える、北学機構の挑戦

――農・工・商の知を生かし、地域とともに未来の価値を創る「共創型大学」へ
政府が示した「戦略17分野」は、日本の未来を支える重要な産業領域として、AI・半導体、量子、バイオ、防災、フードテックなどを位置付けています。これらの分野への取り組みは、研究力の向上にとどまらず、日本の産業や地域社会のあり方を変えていく大きな可能性を秘めています。
こうした変化の中で、地域の大学に求められる役割も変わりつつあります。大学が研究成果を一方的に提供するのではなく、地域の企業や自治体、生産者の皆さまと課題を共有し、それぞれの知見や技術を持ち寄りながら、新たな価値を生み出していく「共創の場」となることが重要です。
北海道国立大学機構(北学機構)は、商学・農学・工学という三つの専門領域を有しています。この強みを生かし、地域にある資源や課題を見つけ、技術やアイデアによって可能性を広げ、社会や市場につなげていく取り組みを進めています。
例えば、「このような技術に関する情報はないだろうか」「既存の技術では難しいが、新たに開発することは可能だろうか」「現在行っている作業の負担やコストを減らせないだろうか」といった現場の具体的な課題についても、専門分野の知見を生かしながら解決方法を一緒に検討していきます。
――戦略17分野を地域産業の可能性につなげる
今後、北学機構が取り組むべき方向は、戦略17分野を北海道の産業や地域課題と結び付け、新たな価値創造につなげていくことです。特に、「バイオ」「先端医療」「資源・エネルギー」「防災」「フードテック」などの分野では、地域の強みを生かした展開が期待されます。
例えば、フードテックにおいては、「農業技術を高度化する」だけではなく、生産現場のデータ活用によるスマート農業、AIによる生産管理、省力化技術による担い手不足への対応、農産物の加工・ブランド化、海外市場への展開など、さまざまな取り組みを一体的に進めることが重要です。
北海道の食を「生産する産業」から「価値を創り出す産業」へ発展させるためには、農学の知見、工学の技術、商学の視点を組み合わせ、現場で活用できる形へつなげていくことが必要です。
――地域とともに未来をつくる
戦略17分野への取り組みで重要なのは、技術や知識を蓄積することだけではなく、それらを社会の中で活用し、新しい産業や価値へ結び付けていくことです。
そのためには、大学だけで研究を完結させるのではなく、企業、自治体、生産者、地域の皆さまと課題を共有し、実証や事業化を見据えながら取り組みを進めることが大切です。
北学機構は、地域の課題に寄り添いながら、ともに考え、ともに試し、ともに未来の産業モデルを創り出す存在を目指します。
――農・工・商の融合による「北海道発モデル」の創出
これからの産業競争力は、一つの専門分野だけでは生み出せません。食料とAI、農業とGX、地域資源と新たなビジネスなど、異なる分野を結び付けることで、新しい可能性が広がります。
商学・農学・工学という多様な専門領域を持つ北学機構だからこそ、研究成果を技術として終わらせるのではなく、地域産業の成長や新たな事業創出につなげていくことができます。
また、北学機構の強みは、地域との距離の近さです。現場の声を聞き、課題を理解し、実際の社会の中で成果を確かめながら取り組める環境があります。
戦略17分野への挑戦は、新たな研究領域を増やすことだけを目的とするものではありません。商・農・工の知を融合し、地域の皆さまとともに北海道から新しい価値を生み出していくための取り組みです。
北学機構は、学生、企業、自治体、生産者、地域の皆さまと連携しながら、未来の産業づくりに貢献してまいります。
北学機構の取り組みや、技術開発・課題解決に関するご相談がございましたら、ワンストップ窓口までお気軽にお問い合わせください。
3. 北学機構の知的財産権
北学機構が保有している知的財産権をご紹介します。一覧は、こちら。
今回は、金属の表面に簡単に皮膜を作る「窒化皮膜形成装置及び窒化皮膜形成方法」と、電極がズレることなく牛の心電位測定ができる「装置固定具、心電位計測システム」の2件の特許権です。共同研究やライセンス契約検討の参考にしてください。
内容は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面の記載に基づいてまとめています。ご興味がある方は、ワンストップ窓口までお問い合わせください。
――特許第7792128号(窒化皮膜形成装置及び窒化皮膜形成方法)
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
――特許第7880189号(装置固定具、心電位計測システム)
※画像を選択するとPDFファイルが開きます。
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IIC News Letterでは、地域の課題を解決し、新たな価値を共創するための情報を発信しています。また、企業へのインタビューなどを通して、地域の未来をいっしょに考える場づくりにも活用しています。
ご意見、ご要望もお待ちしています。お気軽にお問合せください。
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